トム・ロブ・スミス チャイルド44

国家保安省の捜査官レオは、少年が残虐な姿で殺されたことから調査を進めようとするが、国家は事故として処理して……。”共産国に犯罪者はいない”スターリン体制化のソ連を舞台にした、08年度CWA賞最優秀スパイ・冒険・スリラー賞受賞の異色サスペンス。
スパイの知人はスパイ。家族もスパイ。妻もスパイ。スパイを捕まえた者もスパイ。みんなスパイスパイスパイ……。誰も彼もがスパイか囮か、恐るべき50年代ソ連……。半端なホラーを読んでいるより怖い尋問シーンや、共産国ならではの苛烈な貧困描写に、何ジャンルを読んでいるのか困惑してしまう。いやまあ、ソ連各地で見つかる幼児たちの死体から、サイコを追い、主人公は国から追われるわけで。疑えば止まらない人物視点がスリリングだし、特殊舞台をテーマにした奇妙さが組み合わさって、妙なドライブ感から夢中で読める。

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)