倉持浩 パンダ ネコをかぶった珍獣

シロとクロの大きな生きものパンダ。愛嬌のある顔でタケを食べ、木を登ったり寝転がったり気ままな生活に人気がある。上野動物園のパンダ専属飼育員に「なってしまって」10年。謎に包まれた生態や難しい繁殖事業、マスコミとの葛藤を交え、パンダの全貌を語る。

パンダ大好きな親戚の子の話しっぷりを聞いて関連本を読んでみた。パンダのために飼育員だけでなく、多くの人たちとの関わりが伝わってくるのも本書の魅力。大量にタケを消費することから調達への努力と農家の協力。繁殖期が極端に短いことから、中国で活躍するプロフェッショナルを呼んでの挑戦と彼らへの敬意。パンダを見つめる本書は、好奇心に満ちた専門書でもあり、動物にふれ合い続ける使命感と温かさに溢れたエッセイでもある。

「仕事や生活に関係なくても、岩波科学ライブラリーを年に数冊読むような気持ちでいなさい」と教えてくれた先輩がいた。<生きもの>シリーズは読んでいきます。