「クサいメシ」と呼ばれる刑務所の給食。それを作るのは受刑者自身。料理の知識も経験もない受刑者と、それを見守る刑務官も素人同然。日本一小さな男子刑務所で、刑務所栄養士として働くことになった著者が、限られた条件で作れる「美味い飯」とは。
花輪和一「刑務所の中」を再読していると、本書が新聞で紹介されていたので読んでみた。予算も道具も調味料も経験も知識も限られ、教育のための会話も十分にできない。鍵のかかった調理場でくり広げられるエピソードから、食事を作る人である限り、喜んでもらいたいという気持ちが多分に伝わってくる。受刑者との言葉少ない交流を通して、刑務所とは罰する場ではなく、更生するための施設だと教えてくれる。