佐藤多佳子 サマータイム

サマータイム (新潮文庫)

サマータイム (新潮文庫)

佳奈が十二で、ぼくが十一だった夏。プールで出会った少年には左腕がなかった。同時に父親を失ったが、大人びた雰囲気を手に入れた彼。ヒステリックな姉と、彼に惹かれていく僕。ジャズピアニストが弾いた題名の分からない素敵なフレーズ。そして夏休みの終わり。
あ、甘〜い。激甘。でもホンノリと酸っぱい。こういったジュブナイル的な恋愛小説は、中学時代に数冊読んでいたきりだったのですが、ねとらじで推薦されたのを機会ばかりと読んでみました。久しぶりに、こういったのを読むと恥ずかしくなりますね。こんな恋愛に憧れるもなにも、自分が年をとったことを直球で教えてくれます。
全4編の構成になっており、出会った夏から、それぞれの登場人物が回想していく形で書かれる「サマータイム」。多分「ボーイ・ミーツ・ガールが好きです」と話していた時かな?(「一夏の思い出とか書かれると弱い。」だったかもしれない)そんな印象で読んでしまったのですが、姉弟の関係だと分かってうな垂れながらも、お姉ちゃん憧れ属性である僕は凄いウキウキしながら読んでしまいましたね。
解説で森絵都が的確に書いているんだけど、一文が良いわけではなくて、会話などを含んだフレーズが恐ろしいぐらいに光っている1冊です。多分、これを読んでしまったら「海!海だ!」というフレーズは忘れられなくなるでしょう。シーンで印象に残っていく作風なのかは他の作品も読んでみないと分からないので、ちょっと気になることろです。