岡田晴恵 命をつなぐ、献血と骨髄バンク

献血で集められた血液は、どのように管理され使われていくのか。中高年層が割合を占める状況が続く中、さらに少子高齢化社会を迎える未来では? 献血骨髄バンクの必要性、その仕組みを解説する。

献血に行って40数回。その歴史や仕組みを知っておきたかったので読んでみた。まるで赤十字のホームページをコピペしたような内容で、確かに「献血骨髄バンク」の本ではあった。せめて献血の歴史を入れてくれれば。

国内の献血の歴史については赤十字のページが詳しい。東京駅での浜口首相銃撃事件が大きな節目になっていて面白い。

血液事業の歴史|大阪府赤十字血液センター|日本赤十字社

献血と輸血の歴史では、小羊の血を入れたり、血液型の知識がないために死人を出していた歴史が怖すぎる。

https://www.bs.jrc.or.jp/kk/kyoto/ebook/ing_vol085.pdf

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伏尾美紀 北緯43度のコールドケース

北海道警察で経験を積む沢村依理子は、少女死体遺棄事件の捜査に参加する。冷え切っていた少女は5年前に行方不明になっていた子だった。当時の容疑者は死亡したのに、彼女はどこで生きていた? 未解決事件の真相を、博士号を持つノンキャリ警察官が追う。

第67回江戸川乱歩賞を受賞。2ヶ月ほどミステリーに手が伸びなかったけど、あらすじを読んで久しぶりに興奮とも欲情ともいえる感情が湧いた。少女誘拐事件を追う捜査の面白さと、アカデミック・ノンキャリ・女性のストレス3本柱が面白さを強固なものにしている。プライベートの描写や事件の全貌が海外ミステリーを彷彿とさせて、面白さでお腹いっぱい。主人公と関わるキャラクターたちも一癖二癖あり、続きを読んで応援したい。

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王谷晶 君の六月は凍る

田舎町の閉鎖感を書いた表題作と、貧困アルバイト警備員であるオタク女の生活を半私小説的に書いた「ベイビー、イッツ・お東京さま」を収録。

表題作は私の感性ではまったく理解できなかった。半私小説「ベイビー、イッツ・お東京さま」は、傑作「ババヤガの夜」のような、爆走する車に乗ったような怖さと興奮がある。自分自身を含めた人への敵意と歪な愛によって書きった中編だ。不器用な生きかたへの共感とは思いたくないが、痛々しさが滲む文体に心が震える。

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