窪田新之助 対馬の海に沈む

第22回開高健ノンフィクション賞を受賞。人口3万人の対馬で「JAの神様」と呼ばれた営業成績1位の男がいた。しかし44歳にして自ら海にて溺死。彼には巨額の横領の疑いがあった……。敏腕サラリーマンがカリスマ性を発揮し、金を巻き集めていく姿は、まるでヤンマガで連載されたワンピースを読んでいるよう。JAの構造と営業ノルマ、閉ざされた町が三神一体となり、彼を産み成長してしまった……。だけなのだろうか。読み終えても霞は晴れず、ただただ怖さだけが残る。

 

上野庸平 ルポ アフリカに進出する日本の新宗教 増補新版

Twitter(現X)で紹介されていて、新興宗教大好きなので読んだ。書き口は軽いものの、信仰の迫力を感じる。団体それぞれの思惑があったというよりは、熱心な信者が1人いるかどうかが大きいのだろう。アフリカにおける信仰心で見れば、土着のものと外来のものを混ぜ合わせる姿は日本人に近いのかもしれない。文庫版では日本に滞在するイスラーム神秘主義者への取材もあり、とても温かい1冊だと感じた。

本書の価値を物語る一文があり、紹介します。

世界は広いようで実は狭い。そして、その世界に生きる一人一人の人生は、この世界よりずっと広くて深いが、狭いところで相互に密接に繋がっている。

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木下龍也 天才による凡人のための短歌教室

読んだきっかえは朝日新聞のインタビューだったと思うのだけど、 2024年にもっとも衝撃を受けた本です。まさに本書以前本書以降。短歌がとにかく面白くなる! 今までまったく興味なんてなかったのに! 雑誌や新聞に必ずといっていいほど短歌コーナーがあるけど、どうして読んでいなかったんだ! 書き手向けへの内容ではあるけど、強制的に視野を覚醒させる1冊。現代短歌を中心に、2025年を楽しんでいきます。

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