倉持浩 パンダ ネコをかぶった珍獣

シロとクロの大きな生きものパンダ。愛嬌のある顔でタケを食べ、木を登ったり寝転がったり気ままな生活に人気がある。上野動物園のパンダ専属飼育員に「なってしまって」10年。謎に包まれた生態や難しい繁殖事業、マスコミとの葛藤を交え、パンダの全貌を語る。

パンダ大好きな親戚の子の話しっぷりを聞いて関連本を読んでみた。パンダのために飼育員だけでなく、多くの人たちとの関わりが伝わってくるのも本書の魅力。大量にタケを消費することから調達への努力と農家の協力。繁殖期が極端に短いことから、中国で活躍するプロフェッショナルを呼んでの挑戦と彼らへの敬意。パンダを見つめる本書は、好奇心に満ちた専門書でもあり、動物にふれ合い続ける使命感と温かさに溢れたエッセイでもある。

「仕事や生活に関係なくても、岩波科学ライブラリーを年に数冊読むような気持ちでいなさい」と教えてくれた先輩がいた。<生きもの>シリーズは読んでいきます。

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雨穴 変な家

Webライター雨穴が知人から渡された売り物件の図面。謎の隙間、窓のない子ども部屋、奇妙な増築。間取りから、この家に隠された恐ろしい可能性が見えてきた。まさかもう1人、住人がいたのではないだろうか?

奇妙な間取りから調査が始まり、最初の味わいは怪談のよう。しかし、まさかの本格ミステリーに変化していったのには驚いた。間取りのイラストが多く、会話文で進むのでサクサク読める。物語の余韻も上手く、よくできたショートフィルムを見たような満足感がある。読書のモチベーションが枯渇した中、とりあえず読めそうと思って手にしたのは大正解。正直「家と怪談」であれば三津田信三どこの家にも怖いものはいる」や小野不由美「営繕かるかや怪異譚」を薦めたい。

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小野不由美 営繕かるかや怪異譚

叔母が住んでいた町屋には箪笥で隠された奥座敷があった。襖を何度閉めても開いている(奥庭より)。武家屋敷のリフォームをしてから、同居する母は天井の足音にますます悩まされるようになった(屋根裏に誰かいるのよ)。家の困りごとを相談すれば、営繕かるかやが訪れる……。

小野不由美によるハートフル・ホラーと受け取るか、極悪な家の怪異と受け止めるか。実際「残穢」レベルで怖い。なのに物語がとてもやさしい。根本的な解決ではなく、営繕かるかやによって矛を収める姿勢が心地よい。苦悩するシングルマザーと怪談を合体させた「檻の外」が傑作。閉鎖空間である地方都市のコミュニティーと駐車場が舞台になり、予感させる結末が怖い。読書のモチベーションが大きく下がっていた中、ようやく読み通せた作品。思い出しては続きを読みます。

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