ジェラルディン・ブルックス 古書の来歴

ユダヤ教で使われる書「サラエボ・ハガダー」。紛争で行方不明になっていた書が見つかり、古書鑑定家のハンナがサラエボに向かった。羊皮紙に残された蝶の羽の破片。ワインの染み。動物の毛。1つひとつから500年に及ぶ人々の姿が浮かび上がる……。

我が身を捧げる信仰と、差別の宿命と不条理な戦争。それぞれの時代を懸命に生き、「サラエボ・ハガダー」を残さねばと誓った人々を書いた群像劇。複数世代に渡る圧倒的な大河感に満足。現代パートの主人公、古書鑑定家のハンナは調査が進む面白さと、母との軋轢、自身の出生を深掘りする姿も読ませる。600ページ近い創元推理文庫のボリュームに疲れたけど、読み止められない面白さが始終あった。

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須正幹 前川かずお ズッコケ心霊学入門

ハチベエ・ハカセ・モーちゃんの3人組による痛快劇第5弾。心霊写真を撮りたいハチベエは弟分の浩介を連れて噂の幽霊屋敷へ。そこではポルターガイスト現象が起きて、オカルト雑誌から科学者までを巻き込むことに。冒険・推理を経て子どもたちが答えを出す姿勢に、書き手の心境が見えてくるようだった。

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乙一 さよならに反する現象

ここ(ブログ)に記録もないし未読だと思ったら再読だった……(記録し忘れていた)。X発表の超短編を含む書き下ろし4篇が収録されているのでよしとする。今の家族像を書くことで山月記を彷彿とさせる「そしてクマになる」。幽霊がでる家に住み込みながら、お気楽な感性が楽しい「家政婦」。しかしガッツリとホラー×ミステリー。乙一は相変わらず作風を維持し、クオリティは期待に沿う。恥ずかしいけども、主人公たちへの共感はなぜか強い。不思議な作家だ。

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