小野不由美 営繕かるかや怪異譚

叔母が住んでいた町屋には箪笥で隠された奥座敷があった。襖を何度閉めても開いている(奥庭より)。武家屋敷のリフォームをしてから、同居する母は天井の足音にますます悩まされるようになった(屋根裏に誰かいるのよ)。家の困りごとを相談すれば、営繕かるかやが訪れる……。

小野不由美によるハートフル・ホラーと受け取るか、極悪な家の怪異と受け止めるか。実際「残穢」レベルで怖い。なのに物語がとてもやさしい。根本的な解決ではなく、営繕かるかやによって矛を収める姿勢が心地よい。苦悩するシングルマザーと怪談を合体させた「檻の外」が傑作。閉鎖空間である地方都市のコミュニティーと駐車場が舞台になり、予感させる結末が怖い。読書のモチベーションが大きく下がっていた中、ようやく読み通せた作品。思い出しては続きを読みます。

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廣嶋玲子 ふしぎ駄菓子屋銭天堂 6

路地の先に見えた、どうしてこんなところに駄菓子屋が……。今までに見たことのない色とりどりのお菓子が、ここ銭天堂には並ぶ。大柄な女性店主が優しく紹介する言葉はとても心地よくて、不思議なお菓子を買ってしまう……。

駄菓子によって老若男女が紡がれるオムニバスで、偶然にも手にしてしまった登場人物たちが、それぞれの人生で幸も不幸も翻弄される。アイテムの使いかたによって成功も失敗もするドラえもんのよう。銭天堂の管理下を超越し、力が1人歩きする脅威「バランスラスク」にドン引き。

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小川哲 君のクイズ

クイズ王者を決めるテレビ番組「Q-1」。クイズプレーヤー三島玲央は、決勝戦で本庄と並んだ。優勝を決める1問。出題者が読み上げる前に本庄が押した。まさかの0秒解答。真相解明のため、三島は過去の問題を見つめ直すが……。

第13回山田風太郎賞を受賞した「地図と拳」はかなりのボリュームながら一気に読ませる物語だった。本作はスポットライトの眩しさが強烈に記憶に残る傑作。答えを搾りだす思考文体と、主人公の人生をふり返る構成が共鳴し、とんでもない緊張感と臨場感が生まれる。奇抜な謎からしっかり地に足がついた結末まで、 2時間ほどのあっという間の読書体験だった。コミュニケーションツールやSNSを中心に進むので、新鮮さを失わない今こそ読んでほしい。年末のランキングで気になった人はぜひ。

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