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続編が24年度ベストで挙がっていたので読んでみた。第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉を受賞した本書はクオリティ高く、若竹七海を彷彿とさせる危うい探偵像が読ませる。父の真似から探偵業を始め、悪意なき好奇心から生じた快楽を味わってしまう。欲求…
第22回開高健ノンフィクション賞を受賞。人口3万人の対馬で「JAの神様」と呼ばれた営業成績1位の男がいた。しかし44歳にして自ら海にて溺死。彼には巨額の横領の疑いがあった……。敏腕サラリーマンがカリスマ性を発揮し、金を巻き集めていく姿は、まるでヤン…
Twitter(現X)で紹介されていて、新興宗教大好きなので読んだ。書き口は軽いものの、信仰の迫力を感じる。団体それぞれの思惑があったというよりは、熱心な信者が1人いるかどうかが大きいのだろう。アフリカにおける信仰心で見れば、土着のものと外来のもの…
読んだきっかえは朝日新聞のインタビューだったと思うのだけど、 2024年にもっとも衝撃を受けた本です。まさに本書以前本書以降。短歌がとにかく面白くなる! 今までまったく興味なんてなかったのに! 雑誌や新聞に必ずといっていいほど短歌コーナーがあるけ…
男性アイドル事務所の中でユニットを組んでデビューを目指す? よくわかんないけど既視感はある……。あぁ! アイドルマスターだ! と気づいてしまうと、世界観に引き込まれて一気に読んでしまった。短編それぞれに主人公がいて、熱意や特技、癖はバラバラだけ…
社員旅行の朝、気になった男性が散歩道で語る「餓鬼の田」。誰かを犠牲にして幸せを手に入れる「こっくりさん」。他、ホラー短編2編を収録。失踪癖のある作家が遺した原稿をめぐる「フーグ」には意表を突かれた。彼の転移現象を防ぐ攻防の怖さと、意外な結末…
中学校の倉庫から音がする「じんこく」。どこかで撮られた風景写真を探す「Pのクラス」など、新鋭現代怪談作家15名による60編を収録。文通と古井戸を通してのコミュニケーションを書く「古井戸フレンド」が強烈。ぜひ読んでほしいのは「死面の報復」で、まさ…
映画の先生として親しまれた淀川長治。89歳で亡くなるまで、映画少年の心を失わなかった。伝記にはドライなものとウェットなものがあると気づく。著者の思いがにじみ出し、主人公の言葉で語るウェットな伝記は、なんとも不思議な気持ちになるものだ。 映画少…
尼崎の商店街に開く怪談売買所では、お客さんが持ち込んだ話しを100円で買い取る。竹書房のシリーズを小学生向けにリブートした本作は、怪談だけで終わらずサポートまで充実。サンタを見た子、山での怪異を経験した男性に解説を添える。最初のエピソード、関…
田舎の洞窟に封印された化け物の首をめぐる表題作。体育館に響く奇妙な音を探っていく「学校は死の匂い」では、第72回推理作家協会賞短編部門で受賞。他「悲鳴」「ファインダーの向こうに」なども、どれもが面白くて怖い短編集。澤村伊智の書く恐怖は、急に…
リンカーン・ライムはもう追いつけず、キャサリン・ダンスは家族描写が濃厚すぎて、クオリティが高い短編集はマストだけど物足りず……。そんな中で登場したコルター・ショウ。失踪誘拐事件を追ううちに、ゲーム『ウィスパリング・マン』にたどり着く。偶然の…
ファッション史における産業革命は、オートクチュールからプレタポルテへの移行にある。明治維新以降、日本の着物マーケットは楽で、小回りが効くプレタポルテになれなかったのか。4日間でファッション史を網羅する熱量。今年もっともボコボコに殴られた本に…
2016年7月、夜の障害者福祉施設にて重度の知的障害者が襲撃され、19名が亡くなった。相模原事件から見える、日本社会に蔓延する差別意識を考える。事件そのものを書くのではなく、「波紋」を見つめる1冊になる。加害者の手紙への賛同については、悪魔の理論…
中学3年から女子寮クララ舎に入ったしのぶ、菊花、蒔子の3人。入寮試験をクリアし、学園祭の劇も終わってひと段落。美人の蒔子にラブレターが届くと同時に、私にも!? 氷室冴子の見事さは好きの瞬発力にある。好きだと伝える覚悟が、好きだと気づいた姿が素…
「新耳袋」の著者・中山市朗が蒐集した実話怪談シリーズ第9弾。 「工事現場」から掘り出された白い狐。そっくりな自分が近くに存在する「瓜二つ」。夕方の4時に玄関がガチャリと開く「歩く音」。葬儀会社を舞台にした「スズキユウイチ」が印象に残る。 怪談…
1作目に続き図面で読み解くサスペンス。ありふれた家族が住む一軒家から始まり、森のなかの水車小屋、ヤクザが監視するアパート、新興宗教団体の本部へ。小さな狂気の源泉に触れるうち、大河に飲み込まれていく緊張感は恐怖とも快感とも。この手法はもうお腹…
角川ホラー文庫30周年を記念して刊行されたアンソロジー。全3巻の予定で、ベテランから新人まで読める。ベテランの風格を見せつける宮部みゆきの青春ホラー。新名智はファンタジーRPGに秘められたメッセージを読み解かせる。芦花公園、内藤了、三津田信三も…
転校してきた私を助けてくれた紫さんも、道長さんも、皆んな平安時代から街ごとタイムスリップしてきたの⁉︎ 源氏物語を現代学園少女小説版にしたのではなく、まさかの世界設定SF。ヒロインの転校生・一ノ瀬彩羽は出れるのか? それも気にしつつすれ違いラブ…
町外れで父と孤独に暮らしていたサリーは、病死した父を家の焼却炉で焼いた。警察が動く事態になり、葬儀にはマスコミが殺到しする。父の遺品からサリー宛の手紙がでてきたが、そこには人と関わるようにとの願いと、本当の母は若くして誘拐され、サリー出生…
陰謀論アカウントを崇拝する人々を書いた表題作など、信仰心で紡ぐ短編集。小川哲の面白さは、熱狂から抜け出せない空気感にある。共犯性から逃げられない。カリスマに引き込まれる。(搾取される)仕事への(ダメな)使命感に溢れる「密林の殯」は焦燥感、…
6つの連作怪談を収録。とある怪談経験者を複数話で紡ぐ、花柄のスカートを履いた女が現れる「シンパシー」、一族の宿命に巻き込まれる「剔抉」。中でも、1枚の写真が発端となる「隠」が飛び抜けて怖い。2人の友情が壊れていく緊張感は、怪談・モキュメンタリ…
巨樹を取り込みながら三重に巻いた「大樹館」。孤独な天才作家が「密室」で殺され、家政婦の胎児が「未来」から推理を語りかける。乙一が一度書きたかったであろう綾辻行人への完全オマージュを完成させ、読者とともに心を満たす1作だ。これは面白い面白くな…
アラブ・ポーランド・ドイツの専門家が考えるパレスチナ問題。複雑な歴史的大河をそれぞれの知識と理解から紐解く。第二次世界大戦後、ドイツ経由の武器ルートが存在した理由。イスラエルが食料高自給率を維持する理由。それら全ての起点はヨーロッパにあり…
中学3年から女子寮クララ舎に入ったしのぶ、菊花、蒔子の3人。さっそく課せられた入寮式は、45人分のドーナツをこっそり揚げること! しのぶに突っかかる下級生の夢見の存在を忘れていた。終盤、正直な思いを伝える夢見が眩しい。「ざ・ちぇんじ! 新釈とり…
「ぼぎわんが、来る」に続く比嘉姉妹シリーズ第2弾。オカルト雑誌で働く青年が受け取った、とある原稿を起点に死が連鎖していく……。迫りくる正体不明の何かと戦うバトルは前作と変わらず。「リング」式をベースにバトルまで持っていくモチベーションは尊敬す…
Youtubeの映画予告を見て、心地よくボコボコにされる小説だったなと思い返して再読。“ぼぎわん”を呼んでしまう男が家族を守るため、霊媒師・比嘉真琴とフリーライターに救いを求める。初読は比嘉姉妹のキテレツさが理解できなかったけど、映像化のおかげで怖…
平家物語は理解できたけど、太平記がまったくわからなかったので読んでみた。鎌倉時代から室町時代へ、覇権を取ろうとした後醍醐天皇、足利尊氏、楠木正成たちが裏切り、裏切られる。読み終えたときには、結局勢力図がよくわかっていなかった。「太平記を理…
ファン待望、刑事ワシントン・ポーのシリーズ5作目。生放送のトーク番組に出演中、差別的な発言をくり返すジャーナリストが突然倒れて死亡。続いて過激派Youtuberがポーたちの監視をくぐり抜けて毒殺。同時刻に過去に何度も助けてくれた病理学者ドイルが、父…
東京での生活は心を満たしてくれるけど、なにかが満たされない。常にもの足りない男女の22のTwitter(現X)文学。自分の足元を見ろよ! その手に持っているものはなんだ!? 口に含んでいるものを飲みこんでから言え! という感想は、源氏物語への思いと同じ…
心霊スポット突撃系YouTuberチャンイケこと、池田の『オカルトヤンキーch』のファンブック企画のために、廃小屋・病院・ラブホの実話怪談を再調査する……。これでは足りないので都市伝説・怪談の巨頭ネタで串刺しにしたがために、普通のエンタメ・ホラーにな…