2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

有栖川有栖 女王国の城

有栖川有栖が砕いたパズルを、ピース1つを拾い上げてはつないでいき、完成させたと思ったら逆さになっていたような。最後は江神さんが「逆だよ?」とひっくり返してくれる気持ちよさ。大変満足したまま『女王国の城』を読み終わる。みんなが書いているように…

有栖川有栖 双頭の悪魔

シリーズ4作目を読むために有栖川有栖『双頭の悪魔』を再読したものの、4度目ぐらいのはずなのに何も記憶しちゃいねえ。この1作が芸術作品だとすれば、最後の攻め合いは、どのアングルから見ればもっとも美しいかを教えてくれている。僕はそこに有栖川有栖の…

有栖川有栖 孤島パズル

シリーズ4作目を読むために有栖川有栖『孤島パズル』を再読。犯人も、動機も、犯行方法も、トリックも全てちゃんと覚えていた(僕には)稀有な作品。素晴らしい本格ミステリは、瀬戸川猛資が指摘(揶揄)していたクイーン『Yの悲劇』問題と同じところに成り…

有栖川有栖 月光ゲーム ― Yの悲劇’88

有栖川有栖『月光ゲーム ― Yの悲劇’88』を再読。シリーズ4作目を読むための準備運動なので、とくに感想もないなあ。ウィリアム・L・デアンドリア『ホッグ連続殺人』の感想でも引用したように”序盤で提示される大きな謎、中盤の恐怖を煽るサスペンス、最後に…

ウィリアム・L・デアンドリア ホッグ連続殺人

女性三人が乗った車に落下した看板。それは事故のように思えたが、翌日に届いた”HOG”による手紙から、雪に閉ざされた村を震撼させる連続殺人事件は始まった……ウィリアム・L・デアンドリア『ホッグ連続殺人』。ミッシング・リンク系の本格ミステリですが、や…

北方謙三 水滸伝〈1〉 曙光の章

12世紀末の中国。国家の腐敗を嘆き、民のために打倒政府を志した者たちがいた……。北方謙三『水滸伝〈1〉 曙光の章』にして素晴らしすぎる。まだ水滸のスの字もでてきちゃいないが、例えば武術師範代・林沖の運動馬鹿なキャラに笑わせられつつも、謀反の疑い…

森博嗣 タカイ×タカイ

森博嗣『タカイ×タカイ』は、地上15メートルに掲げられた他殺死体が有名マジシャン宅で発見される。大筋はファンのみが楽しめる。トリックにおいては、ガッチガチの古典本格ミステリ・ファンに読ませてみたいよね、と多々思ってしまう最近の森節が効いている…

ジェフリー・ディーヴァー コフィン・ダンサー

ジェフリー・ディーヴァー『コフィン・ダンサー』でもドンデン返しがあるんだろうな、と思って読んでも驚きすぎだ俺。必ず完遂させる殺し屋”コフィン・ダンサー”対四肢麻痺の科学捜査家”リンカーン・ライム”。陽動作戦に次ぐ陽動で、どちらも追いつき追いか…

海堂尊 チーム・バチスタの栄光

海堂尊『チーム・バチスタの栄光』を一気読み。海外サスペンスを彷彿とさせる国内作家が、今書き続けていることが大切なのか(やー海外にもっと面白いのがいるじゃないですか、と言ったら怒られた)。いやでも、古典本格のような手順といい、手術シーンとい…

ルカ・ディ・フルヴィオ ディオニュソスの階段

昨年にちゃんと読み終えていればベスト作品に挙げていたのにと悔やめる。読むきっかけになったのはAsukaの図書室本館より(多謝)、ルカ・ディ・フルヴィオ『ディオニュソスの階段』。新世紀(1900年)を祝う中、自分を神だと思いこむ猟奇殺人犯が登場する。…

斉藤洋 西遊記 1,天の巻 2,地の巻

乱暴者でありながらも、優秀な猿王である孫悟空の冒険が始まる。児童向け(小学生中学年ぐらいかな)に書き直した斉藤洋『西遊記 〈1〉 天の巻』『〈2〉 地の巻』を読み始める。石から生まれて……どうして三蔵法師と旅をすることになるのか、まったく知らなか…

中上健次 枯木灘

読書会で中上健次『枯木灘』を読む。和歌山を舞台に、ストイックに土建屋として働く秋幸の血脈と暴力を書いた”紀州サーガ”。風の気持ちよさ、太陽の痛さ、川の冷たさ……。筋立てはシンプルなものの、風土を感じさせる文章が土建屋だけあって濃厚。タイミング…

サイモン・シン フェルマーの最終定理

サイモン・シン『フェルマーの最終定理』は、数学者からアマチュア・パズラーまでを魅了した表題が証明されるまでを追ったドキュメンタリ。そして、エンタテイメントあふれる歴史小説でもあり、常にクライマックスにさしかかるサスペンスともいえる大傑作。…

鏡明 不確定世界の探偵物語

また珍しいものを読んだ気になる鏡明『不確定世界の探偵物語』。読書中のSF的気持ちよさはあとがき・解説でやっとわかった。大富豪が所有するタイムマシンによって小さな変化が訪れる世界のハードボイルド。私立探偵ノーマンへ依頼される事件が独特になって…

伊藤計劃 虐殺器官

9.11以降、核爆弾によってサラエボが消失した世界を書いた伊藤計劃『虐殺器官』。内戦や民族紛争が増加する中、その背後に見え隠れするジョン・ポール。語り手は米情報軍・特殊部隊所属のクラヴィス・シェパード。彼の視線から語られる母の、そして児童兵た…

北山猛邦 少年検閲官

北山猛邦『少年検閲官』がファンタジーと思いきや、「孤島ものなのに”孤島”である意味が見出せない」ような、そんな甘いものじゃなかった。書物が禁止された世界、日本の小さな町にやってきた英国少年クリスは、町で噂される”探偵”の存在を知る。家々に印さ…

ロバート・J・ソウヤー イリーガル・エイリアン

この面白さたまんねー! と一気に読めるロバート・J・ソウヤー『イリーガル・エイリアン』。エイリアンのファースト・コンタクトから、滞在先で起きた殺人事件をめぐる法廷ものに早代わりするのは説明するまでもなく、噂どおりSF・ミステリの傑作。どうトリ…

浦賀和宏 堕ちた天使と金色の悪魔

浦賀和宏『堕ちた天使と金色の悪魔』が駄目デス・ノートになっていた。不死身になったとはいえ、いじめられていた頃のノートを読み返し、復讐した奴らの顔を思い浮かべる八木剛士。暗い……。前半5冊のタイトルは八木を中心としたものであり、後半は世界から見…

森博嗣 キラレ×キラレ

クイーン『九尾の猫』のゼイ肉を削いだら森博嗣『キラレ×キラレ』になったんじゃないかな。満員電車で背中を切られる事件が続き、警察は気がつかなかった共通点が被害者にはあった……。"レトロ"なものを書くというわけで、前作は地下室に幽閉されていた兄など…

須賀しのぶ 帝国の娘 ― 流血女神伝

秋に終わるとなれば再読するしかないと須賀しのぶ『帝国の娘』。長大ファンタジーなので、どこまで伏線が回収されて、何が残っているのか気にはなっていたが……すべてはここに帰ってくるんだ! と須賀しのぶの設計図に感動した。家族は本当にわたしを売ってし…

マークース・ズーサック 本泥棒

『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評されたマークース・ズーサック『本泥棒』が、いやいや素晴らしかったですよ。ナチスが力を伸ばしていくドイツ下で、死神が語る少女リーゼルの青春。本を盗むことによって勇気を得て、人に出会い、成長し、別れて…

レイモンド・チャンドラー 長いお別れ

いやー海外ものになれたつもりでもレイモンド・チャンドラー『長いお別れ』を読み通すのに苦労した1週間。訳が古かったのはあるけど、読み終わってみると苦手なプロットだったので……と、説明できない具合になってしまった。春樹版でも似た印象になるのかしら…

森博嗣 すべてがFになる ― THE PERFECT INSIDER

数年に1度はシリーズを通して読みたくなって、この勢いだと『四季』までいきそう。というわけで森博嗣『すべてがFになる ― THE PERFECT INSIDER』を文庫版で再読。なにが素晴らしいって瀬名秀明の解説。森と瀬名自身の違いを説明し、理系ミステリと呼ばれた…

木原浩勝,中山市朗 新耳袋 第9夜 ― 現代百物語

夏! 角川文庫! 木原浩勝,中山市朗『新耳袋 第9夜 ― 現代百物語』! となるわけです。瞬間的にゾクッとくる1編は少ないものの、全部を読み終わってからくるゾクゾク感で眼をつむるのが怖くなる。ラストを飾る警備員ものが今回のベスト。マンネリ化してきた…

ジェフリー・ディーヴァー ボーン・コレクター

グイグイ読めそうな海外ものが読みたかったのでジェフリー・ディーヴァー『ボーン・コレクター』を手にする。ニューヨークを闊歩する猟奇殺人犯ボーン・コレクターを追うのは、事故によって首から下が動かなくなった市元刑事リンカーン・ライム。毎回犯人が…

森博嗣 冷たい密室と博士たち

森博嗣『冷たい密室と博士たち』をノベルスで再読。第1作には見劣りする……と思うのではなくて、大きく引いて読んでみると、シリーズ中で誰よりも印象に残る”動機”と”犯人”だったのね。というのを太田忠司と西澤保彦(文庫版)の解説で気がづいた。構成に難あ…

山本弘 審判の日

山本弘『審判の日』は、SFマガジンに掲載された『時分割の地獄』だけは色合いが違うものの(SFマガジンらしいと感じさせる)、書き下ろし収録作の多くが『神沈』のメモみたいな感じ。ブーブー文句もあるけど『屋上にいるもの』が読めただけで大満足という1冊…

山本弘 まだ見ぬ冬の悲しみも

山本弘『まだ見ぬ冬の悲しみも』の何が素晴らしいって、グダグダ横になりながらザーと1篇を読んでしまえば、SFを堪能した気になってよい眠りに入れるってこと。SFマガジン読者賞を受賞した「メデューサの呪文」が読みやすくてよいよい。『審判の日』と似たよ…

森博嗣 四季 冬

森博嗣『四季 冬』を文庫版で再読(愛蔵版でしか読んでなかった)。犀川と四季の再会、そして彼女の到達した生死。ファン・ブックは『秋』までだと思っていて(オール・スターという意味で)、これだけは違うと思っている。言うなれば、長すぎるエピローグじ…

森博嗣 四季 夏

森博嗣『四季 夏』をノベルス版で再読。真賀田四季13歳ってだけで大絶賛な僕ですが、『すべF』〜『赤緑黒白』までのラインが繋がるという点では、このシリーズ中で間違いなく最高の楽しさでしょう。直感で”冬”→”夏”とイレギュラーな再読になりましたが、遊園…