2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

須賀しのぶ 流血女神伝喪の女王 7

須賀しのぶ『流血女神伝喪の女王 7』は、物語の最後の最後へ向かって走りぬくだけ。そしてウルウルしっぱなしな僕。素晴らしいスピード感と、ここまで広がった風呂敷が閉じられる快感が楽しみ。っつーかさー、こんだけいい具合に大きくなったロリショタキャ…

森博嗣 どきどきフェノメノン ― A phenomenon among students

森博嗣『どきどきフェノメノン ― A phenomenon among students』を読むが……。面白くないわけじゃないけど、面白いともいいきれない。なつかしい短編「何をするためにきたのか」を彷彿とさせる、何時でもどれだけでも書けるタイプの長編。どきどきフェノメノ…

赤木かん子編 ミステリーセレクション5 ミステリーはミステリーを呼ぶ

子ども向けに編集されたミステリ・アンソロジの5巻目。大御所から2編を収録した赤木かん子編『ミステリーセレクション ミステリーはミステリーを呼ぶ』。島田荘司の御手洗もの「IgE」は荒々しい発想でありつつ、そのテンヤワンヤの騒ぎが楽しい1編。鮎川哲也…

上遠野浩平 酸素は鏡に映らない

ミステリーランド第12弾の上遠野浩平『酸素は鏡に映らない』。なんかセカイってスゲー格好よくねーか? と子どもなら思っちゃう(25歳になっても)文体と台詞が良さとして読める、企画に相応しい1冊。既刊シリーズと繋がっているパーツ自体も面白く、次を読…

宇月原晴明 聚楽 ― 太閤の錬金窟

第11回日本ファンタジーノベル大賞受賞でデビューした『信長 ― あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』の続編になる宇月原晴明『聚楽 ― 太閤の錬金窟』は、面白さと出来が格段とアップ。京都聚楽第の地下で秀次(秀吉の甥)が錬金術をしていたってネタをベース…

宇月原晴明 信長 ― あるいは戴冠せるアンドロギュヌス

宇月原晴明『信長 ― あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』は第11回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。信長は両性具有者(ふたなり)だったよーってネタの時代小説パートと、30年代ドイツにいたフランス詩人アントナン・アルトーが日本人青年と出会う、2構成…

乙一 銃とチョコレート

乙一『銃とチョコレート』を読む。4部も乙一も好きな読者は永遠の乾きに苦しむことになるのでした。おしまい。いや本当、素晴らしい作品なんだけど、期待するなっつーのも無理な話しで。なんか未練がましい男でやだなあ。銃とチョコレート (ミステリーランド…

冲方丁 オイレンシュピーゲル 2

2冊同時発売かと思いきや犬=オイレン版から先にでていた冲方丁『オイレンシュピーゲル 2』を読む。ロシアの衛星がオーストリアに撃墜し、詰まれていた原子炉を狙って7つのテロ組織が動き出す、冲方が書く最高のジャンク小説。マルドゥック・シリーズほど読…

冲方丁 スプライトシュピーゲル オイレンシュピーゲル (1)

近未来ウィーン。人種・文化・技術が集結する国際都市ミリオポリスを襲う様々なテロ。それに立ち向かうのは特技増強された少女たち。弾丸のように飛び交う妖精『スプライトシュピーゲル』と、瞬時にして走りぬく犬『オイレンシュピーゲル』。 記号を使った冲…

古橋秀之 冬の巨人

この流れで古橋秀之『冬の巨人』を読む。軽っ! って短いからとか文章そのもののことではなくて、まじでジブリ映画を堪能した2時間のような、実に爽やか心が軽くなる読後感。短編でもなく長編でもなく、アニメ映画のために作られたような絶妙な中編であり、…

山口雅也 ステーションの奥の奥

山口雅也『ステーションの奥の奥』は、叔父との楽しい夏休みを利用して、新築改装前の東京駅を自由研究にするはずだったが……、誰も通れないはずの封鎖地区で首切断死体を発見してしまう。素晴らしいシチュエーションが用意されていて、後味のよさは格別。好…

須賀しのぶ 流血女神伝 喪の女王 6

須賀しのぶ『流血女神伝 喪の女王 6』から、こうしてリアルタイムで最終巻が読めそうなのも感慨深い。だけど本当に終わるの? といった遅々としたものへの不安も感じる。終わってほしくないって気持ちなのかもな。ともかく、最終数ページの盛り上がりと、表…

米澤穂信 ボトルネック

米澤穂信が書くから面白いんじゃねーだろうかと思った『ボトルネック』。自分が生まれていない世界に飛ばされてさあ、可愛いお姉ちゃんがいてだよ、そんでまあ、いなくなった恋してた人がピンピンして、中2病くさい主人公が……ねえ? 残り数ページは、いきな…

赤木かん子編 ミステリーセレクション1 ミステリーは身をたすく

子ども向けに編集されたミステリ・アンソロジで、1巻目の赤木かん子編『ミステリーセレクション1 ミステリーは身をたすく』。マーク・トウェン「百万ポンド紙幣」、O.ヘンリ「千ドル」、ヘンリイ・スレッサー「逃げるばかりが能じゃない」、ジョンストン・マ…

赤木かん子編 ミステリーセレクション2 ミステリーはユーモアとともに

子ども向けに編集されたミステリ・アンソロジの2巻目、当たり中編3本を収録した赤木かん子編『ミステリーセレクション ミステリーはユーモアとともに』。亜愛一郎シリーズからサラッと読める「歯痛の思い出」。もとは同人誌だったけど口コミで広まった青井夏…

森博嗣 イナイ×イナイ

森博嗣『イナイ×イナイ』は、Gシリーズではなく(どうなったんだろ)、新しいXシリーズ1巻目。探偵事務所に勤める助手2人は美術品鑑定のために出向くが、豪邸の地下で起こった殺人事件に遭遇する。そこに数十年も幽閉されていたはずの兄の失踪……。頭の体操の…

赤木かん子編 ミステリーセレクション3 ミステリーは仕事する

子ども向けに編集されたミステリ・アンソロジの3巻目。加納朋子「月曜日の水玉模様」と、松尾由美「なぜ、助産婦に頼まなかったのか?」の、働く女性を主人公にした国内中編2本を収録する赤木かん子編『ミステリーセレクション ミステリーは仕事する』。コー…

大森望,豊崎由美 文学賞メッタ斬り! リターンズ

新刊がでているというのに企画シリーズ2冊目大森望,豊崎由美『文学賞メッタ斬り! リターンズ』を読む。文学賞のワイドショーとしては前と変わらず、一言でまとめたら”抽象的に難しい言葉で書評しなくても、具体的に”じゃないのかなあ。この2人がやるとネタ…

赤木かん子編 ミステリーセレクション4 ミステリーはおいしい

子ども向けに編集されたミステリ・アンソロジの4巻目。”食”をテーマにした4本を収録する赤木かん子編『ミステリーセレクション ミステリーはおいしい』。O.ヘンリはミステリじゃないだろうと思いつつ、実にお洒落な短編「アラカルトの春」。ジェイムズ・ヤッ…

クリストファー・プリースト 逆転世界

『奇術師』(感想)の10倍は面白い(自分比)クリストファー・プリースト『逆転世界』。可動する巨大都市”地球”で成人と認められたヘルワードは、ギルドの一員として外界で働くことになり、月と太陽が歪んだ荒れた大地を知るが……。古橋秀之が書けばとんでも…

クリストファー・プリースト (プラチナファンタジイ)奇術師

クリストファー・プリースト『(プラチナファンタジイ)奇術師』は、世に名を広めた天才奇術師2人の手記を巡る伝記もの。いやー恥ずかしいかぎりの誤読をした。プリーストの初読みは短編「限りなく夏」(『20世紀SF〈4〉1970年代 ― 接続された女』収録)で、…

石ノ森章太郎 古事記 ― マンガ日本の古典(1)

神が日本を作ったときから33代天皇までを稗田阿礼が暗唱し、太安万侶が書く。そうして作られた『古事記』より、上巻の日本神話ダイジェスト〜初代神武天皇誕生までを描いた石ノ森章太郎『古事記 ― マンガ日本の古典(1)』。岩戸にヤマタノオロチに白兎に………

田中哲弥 大久保町の決闘

ひさしぶりに(本当に)どうしてこの作品が好かれるのかなあ、と思った田中哲弥『大久保町の決闘』(読んだのは電撃文庫版)。西部劇の魅力が伝わってこなかったり、ギャグを薄ら寒く感じたりしたからじゃないかなあ、と思いつつ、この機会にいっきに読んで…

谷川流 涼宮ハルヒの分裂

みんな無事に進級、2年生になりました谷川流『涼宮ハルヒの分裂』。新章そうそう新たな敵がでてきたのはボチボチですが、終盤からの変な展開が面白い。敵つってもそうくるか! 高校生たち(主にハルヒ)が手を伸ばせる距離にいる、ってのがミソなんだろうな…

花村えい子 落窪物語 ― マンガ日本の古典(2)

花村えい子『落窪物語 ― マンガ日本の古典(2)』は、継母にいじめられている落窪姫君が、貴族男性や女房の助けによって救われていく、1000年前に書かれていた『シンデレラ』ストーリだ。「太平記」や「平家物語」といった軍記ものを抜いて、こんなに面白い…

山田正紀 宝石泥棒

”甲虫”を守護神とする少年ジローは、愛してしまった女ランを手に入れるために、”月”を求めて”空なる螺旋”へ仲間たちと旅立った……。山田正紀『宝石泥棒』は、氏らしさが詰まっていた1作。しかし古臭さがどうしても拭えなくて、(フォローじゃないけど)当時の…

浦賀和宏 世界でいちばん醜い子供

あの出来事から数日……浦賀和宏『世界でいちばん醜い子供』。同じ高校生活にしても、「毎日を楽しくしたいっ!」なハルヒが陽で、このシリーズは陰だなあ。浦賀和宏が書く屈折した学園生活は本当に癖があって、そこにズブズブに足をつっこんで読める者として…

キャロル・オコンネル クリスマスに少女は還る

本当は賛否両論のアクロバットを期待したんだけど、堅実なサスペンスだったキャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』。誘拐された少女2人を追う刑事と女性心理学者の周辺をベースに、時々はさまれる少女の脱出劇がとにかく面白くて、このへん半端ない…

津原泰水 ブラバン

ページをめくる手も涙もとまんねえ! こんなに小説とのグルーブを感じたのは久しぶり。友人の死を機会に思い出す、熱中したあの日々……津原泰水『ブラバン』。序盤、楽器名がわからないから翻訳ものより読みにくかったけど、気にならなくなるんだよなあ。ギタ…

レスター・デル・レイ 逃げたロボット

岩崎書店冒険ファンタジー名作選よりレスター・デル・レイ『逃げたロボット』。ガニメデから地球に帰ることになった少年パウロとその家族は、彼の親友であり親でもある家事ロボットのレックスを売ることにした……。レックスの視点から物語られるから上記あら…