2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

コリン・デクスター キドリントンから消えた娘

2年前に失踪したままの娘から手紙が届くが、モース警部は”彼女は死んでいる”と推理を展開するコリン・デクスター『キドリントンから消えた娘』。人の話を聞いて推理を展開するのみ、とまあ構成は地味な作品。だけどモース警部の考えかたや、巧妙に隠された伏…

冲方丁 マルドゥック・ヴェロシティ

冲方丁『マルドゥック・ヴェロシティ』を読んでしまえば、『シュピーゲル』シリーズは「お乳でも吸ってろ」な離乳食みたいなもんだな。山風忍法帖にはないボリューム、つまりキャラクタにページを割いているのは今らしいのかな。マルドゥック・ヴェロシティ…

あおむら純 ドラえもん 人物日本の歴史 卑弥呼 / 空海

ドラえもんの名を借りた日本の伝記マンガで、とても勉強になる良作。読んでみたのは、卑弥呼の後を継ぐことになる少女を中心に邪馬台国とその時代を描いた『卑弥呼 - 弥生時代』と、神童と呼ばれた少年が一大宗派を確立させるまでを描いた『空海 - 平安時代…

鑑賞シリーズ 法隆寺献納宝物

『鑑賞シリーズ 法隆寺献納宝物』は、どう美しく、どして価値があるのかを端的に説明するテキスト。そしてガイドブックにして、最高の入門書になっている。法隆寺とその献納の歴史、理由、意味、それに重要な宝物をカラーで掲載してなんと380円。思わずオォ…

岡崎二郎 宇宙家族ノベヤマ(1)

(多分)岡崎二郎『宇宙家族ノベヤマ(1)』が傑作だ(と思う)。タイトルや表紙からして岡崎二郎が得意とするホノボノSFかと思いきや、とんでもない風呂敷の大きさを感じさせるコンタクトSFだった。 「この宇宙はDNAで満ちている」。宇宙から届いた信号に記…

古橋秀之 超妹大戦シスマゲドン

表紙から連想できるラストに泣いた『超妹大戦シスマゲドン』。『サキガケ! 妹塾』とでもいうような(多くの妹が戦う)内容で、有名なアニメ、コミック、エロゲを元ネタにしたギャグを織り交ぜながら全2巻完結! ネタ本でありつつ、ライトノベルや中華演義、…

山田正紀 雨の恐竜

ガッチリとした本格ミステリが読みたければ山田正紀『雨の恐竜』をお薦めするよ。14才少女3人の心を甘酸っぱく書いた青春小説のようであり(山田正紀の文体にびっくりだよ)(いい意味で)、その純真さを照らし合わせたような真っ直ぐな本格ミステリ。容疑者…

野村進 千年、働いてきました ― 老舗企業大国ニッポン

野村進『千年、働いてきました ― 老舗企業大国ニッポン』を読む。世界に類をみない、100年以上続く老舗が多く存在する日本。それら企業がどのようにして生き残り続け、また先端技術の場で活躍するのかを、軽い文体でドキュメントしている。なるほど”今”へと…

山田正紀 妖鳥 - ハルピュイア

帯の”密室大トリック!”って密室あったか? ともかく山田正紀『妖鳥 - ハルピュイア』の魅力を語るのはむつかしい。女性への不信感や、幻想的な雰囲気が、けっして上手くまとまっているとはいえない作品だからだ。妖鳥(ハルピュイア) (幻冬舎文庫)作者: 山田…

井上章一 つくられた桂離宮神話

井上章一の講演がえらく面白かったので、彼の代表的著書『つくられた桂離宮神話』を読む。建築家タウトが絶賛した桂離宮には、日本建築界の思想誘導が隠されていた……。どうしてタウトが桂離宮を見たのか? そのバックボーンを探ると、時代背景が見えていく。…

山田正紀 阿弥陀(パズル)

山田正紀『阿弥陀(パズル)』のマーケットプレイスはなに? 巨大密室と化したビルを舞台に、監視カメラに移っていたにも関わらず、エレベータに乗った女が消えた……という短くシンプルな作品。謎をディスカッションして解けたと思ったら、章末にまた次の謎が…

山田正紀 渋谷一夜物語

オヤジ狩りにあった小説家が「面白い話を聞かせろ」と即席で語りはじめる山田正紀『渋谷一夜物語』。「世にも奇妙な物語」に似た日常系の短編集で、後半は消化不良というか幻想的というかSFっぽいのがいくつか(序盤ほど切れ味が高く思えるのは、もしかして…

ジョージ・R・R・マーティン 剣嵐の大地〈3〉 ― 氷と炎の歌〈3〉

1部で始まった椅子取りゲームも第3部でようやく音楽が止まった(もちろん何人かは座れなかったけれども)。それにしても『剣嵐の大地〈3〉 ― 氷と炎の歌〈3〉』の展開はねえ、酷いよお、酷すぎる。こんな茶番なのにちっとも笑えませんよ。だから極めて不本意…

森博嗣 ηなのに夢のよう

吉村達也と清涼院流水をミキサーにかけてフライパンで焼いたような作風になってきてるよね、森博嗣。実に香ばしい。(追記)いまさら何を言ってるんだという気になってくるなあ。なんとも。ηなのに夢のよう (講談社ノベルス)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講…

ジョージ・R・R・マーティン 七王国の玉座〈4〉〈5〉―氷と炎の歌〈1〉

『七王国の玉座〈4〉―氷と炎の歌〈1〉』を再読。1部、2部は終盤より「どうなっちゃうの!?」な手前ぐらいが一番面白いかも。いやでも終盤のたたみかけるような展開も捨てがたく、「あー続きがねえ」虚脱感もよい。3部は落ちるところに落ちて、最後の数ペー…

フィリップ・プルマン 黄金の羅針盤

主人公を演じるダコタ・ブルー・リチャーズがあまりにも可愛いので『黄金の羅針盤』を読む。これ面白い。12歳の少女ライラが波乱万丈の冒険にでかけるのもいいんだけど、終盤で展開するスケール、宇宙の謎っつーか神様の存在っつーか(ばらさない程度にかけ…

機動警察パトレイバー 劇場版,機動警察パトレイバー2 the Movie

『機動警察パトレイバー 劇場版』と『機動警察パトレイバー2 the Movie』をいまさら見て、とてつもない衝撃をうける。これで95年の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』に続くんだもんな。 コンピュータウィルスと、都市部でのクーデターをテーマにした2作は…

須賀しのぶ 喪の女王 (5)

泣く用意はすでにできてるぜ! とばかりに須賀しのぶ『喪の女王(5)』を読む。あっさり書いているけど中身は重い。もうちょっとこう大きなうねりを欲したいところだけど、前作のことを思えば今回は一息つきたかったところ。終わりへ向けて新たなスタート地点…

ドラえもんの社会科おもしろ攻略 日本の歴史がわかる

(書店にもあるけど)国立博物館で売っていた『ドラえもんの社会科おもしろ攻略 日本の歴史がわかる』。中学受験レベルの日本史を2冊にし、全体を簡単に見通せて便利だ。ザックリと要点だけをドラえもんが説明し、過去の歴史と照らし合わせてのび太が嘆くあ…

森博嗣 モリログ・アカデミィ〈3〉

本を読む気がしないときに『モリログ・アカデミィ〈3〉』が助かる。ホームルームを適当に流して、数学を考えながら布団に入る。そして、読まなきゃいけない本の期日を思い出して寝られないスパイラル。MORI LOG ACADEMY〈3〉日のないところに書け無理絶えず …

WXIII 機動警察パトレイバー

スピンオフ作品で評価真っ二つなのはともかく、『WXIII 機動警察パトレイバー』が面白かった。飛行機落水から東京湾周辺で起こる異変を追う警視庁。2人の刑事は生物学研究所に接点をみつけるが……。ロボットアニメとして地味なんだけど、良質の刑事ものミステ…

うえお久光 悪魔のミカタ666 スコルピオン・オープニング

2学期編開幕のうえお久光『悪魔のミカタ666 スコルピオン・オープニング』。うん。綾先輩のおっぱいのためなら僕は死ねる。ともかく、オープニングと30分本編のいいスタート。エンディングまでこれまた長いんだろうな。ヒロインたちはどんどん魅力を磨く努力…

ルカ・ディ・フルヴィオ『ディオニュソスの階段』(の感想)は序盤のたるさに目をつむって最後まで読むべし。卑怯なぐらい感動的な成長小説だ。

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新アウター・リミッツ(シーズン1)『慈悲と愛』を10年ぶりぐらいに再視聴。凄い大ドンデン返しだ。

06年度読んでよかった本

今年はこれがよかった! という自分なりのベスト(05年版)。今まで散々「未完のシリーズものが嫌い」と言ってきたけど、今年はシリーズもの(完結したのもふくめて)が実に熱かった。 まずは紹介してもらった作品で、2年ぶりシリーズ発売 and 完結 and 講談…

森博嗣 λに歯がない

森博嗣『λに歯がない』が酷い、ではない。プロットを書いてないから、超有名トリックに似ているのに、あっちは名作で、こっちは駄作になる。一発勝負する短編ならいい……ではないのかなあ。物理トリックと叙述トリックの差なのか。考えるには知識が足りない、…

ジョージ・R・R・マーティン 剣嵐の大地〈1〉 ― 氷と炎の歌〈3〉

ティレル家! ティレル家! 続々と魅力的な新キャラが投入され、物語はさらに複雑さを増すジョージ・R・R・マーティン『剣嵐の大地〈1〉 ― 氷と炎の歌〈3〉』。私生児のジョン、小人のティリオン、囚われ続ける少女……。どれも第2部から気になっていたけど、…

結城心一 まとちゃん

超美味いカレー食べてる最中に、ウンコの話しを小刻みにされるような四コマ漫画結城心一『まとちゃん』。可愛い女の子。そして虫が好き。しかし愛してない。ほのぼの可愛い+小さな虫+卵という、なんともグロテスクな一面に毒があふれていて困る。その具合…

シオドア・スタージョン 輝く断片

読んでもわからず、説明されてアアナルホド。この特有(?)な感じが3度目のスタージョン(なんだかな)。シオドア・スタージョン『輝く断片』でも唐突な展開や急なオチ(と感じる)作風に面白さを見出せない。全体にわたるテーマ”孤独と愛”が「早すぎた某ジ…

フレドリック・ブラウン 異色作家短篇集2 さあ、気ちがいになりなさい

星新一・訳ってだけで効果あるよね。フレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』は無茶なネタもあるけど、なんとも楽しく感じさせる、かな。はたしてその結末は幸せなのか? と「ノック」が残す最高の余韻。ただただ奇妙な「帽子の手品」の2作が…