2024-01-01から1年間の記事一覧
中学3年から女子寮クララ舎に入ったしのぶ、菊花、蒔子の3人。入寮試験をクリアし、学園祭の劇も終わってひと段落。美人の蒔子にラブレターが届くと同時に、私にも!? 氷室冴子の見事さは好きの瞬発力にある。好きだと伝える覚悟が、好きだと気づいた姿が素…
「新耳袋」の著者・中山市朗が蒐集した実話怪談シリーズ第9弾。 「工事現場」から掘り出された白い狐。そっくりな自分が近くに存在する「瓜二つ」。夕方の4時に玄関がガチャリと開く「歩く音」。葬儀会社を舞台にした「スズキユウイチ」が印象に残る。 怪談…
1作目に続き図面で読み解くサスペンス。ありふれた家族が住む一軒家から始まり、森のなかの水車小屋、ヤクザが監視するアパート、新興宗教団体の本部へ。小さな狂気の源泉に触れるうち、大河に飲み込まれていく緊張感は恐怖とも快感とも。この手法はもうお腹…
角川ホラー文庫30周年を記念して刊行されたアンソロジー。全3巻の予定で、ベテランから新人まで読める。ベテランの風格を見せつける宮部みゆきの青春ホラー。新名智はファンタジーRPGに秘められたメッセージを読み解かせる。芦花公園、内藤了、三津田信三も…
転校してきた私を助けてくれた紫さんも、道長さんも、皆んな平安時代から街ごとタイムスリップしてきたの⁉︎ 源氏物語を現代学園少女小説版にしたのではなく、まさかの世界設定SF。ヒロインの転校生・一ノ瀬彩羽は出れるのか? それも気にしつつすれ違いラブ…
町外れで父と孤独に暮らしていたサリーは、病死した父を家の焼却炉で焼いた。警察が動く事態になり、葬儀にはマスコミが殺到しする。父の遺品からサリー宛の手紙がでてきたが、そこには人と関わるようにとの願いと、本当の母は若くして誘拐され、サリー出生…
陰謀論アカウントを崇拝する人々を書いた表題作など、信仰心で紡ぐ短編集。小川哲の面白さは、熱狂から抜け出せない空気感にある。共犯性から逃げられない。カリスマに引き込まれる。(搾取される)仕事への(ダメな)使命感に溢れる「密林の殯」は焦燥感、…
6つの連作怪談を収録。とある怪談経験者を複数話で紡ぐ、花柄のスカートを履いた女が現れる「シンパシー」、一族の宿命に巻き込まれる「剔抉」。中でも、1枚の写真が発端となる「隠」が飛び抜けて怖い。2人の友情が壊れていく緊張感は、怪談・モキュメンタリ…
巨樹を取り込みながら三重に巻いた「大樹館」。孤独な天才作家が「密室」で殺され、家政婦の胎児が「未来」から推理を語りかける。乙一が一度書きたかったであろう綾辻行人への完全オマージュを完成させ、読者とともに心を満たす1作だ。これは面白い面白くな…
アラブ・ポーランド・ドイツの専門家が考えるパレスチナ問題。複雑な歴史的大河をそれぞれの知識と理解から紐解く。第二次世界大戦後、ドイツ経由の武器ルートが存在した理由。イスラエルが食料高自給率を維持する理由。それら全ての起点はヨーロッパにあり…
中学3年から女子寮クララ舎に入ったしのぶ、菊花、蒔子の3人。さっそく課せられた入寮式は、45人分のドーナツをこっそり揚げること! しのぶに突っかかる下級生の夢見の存在を忘れていた。終盤、正直な思いを伝える夢見が眩しい。「ざ・ちぇんじ! 新釈とり…
「ぼぎわんが、来る」に続く比嘉姉妹シリーズ第2弾。オカルト雑誌で働く青年が受け取った、とある原稿を起点に死が連鎖していく……。迫りくる正体不明の何かと戦うバトルは前作と変わらず。「リング」式をベースにバトルまで持っていくモチベーションは尊敬す…
Youtubeの映画予告を見て、心地よくボコボコにされる小説だったなと思い返して再読。“ぼぎわん”を呼んでしまう男が家族を守るため、霊媒師・比嘉真琴とフリーライターに救いを求める。初読は比嘉姉妹のキテレツさが理解できなかったけど、映像化のおかげで怖…
平家物語は理解できたけど、太平記がまったくわからなかったので読んでみた。鎌倉時代から室町時代へ、覇権を取ろうとした後醍醐天皇、足利尊氏、楠木正成たちが裏切り、裏切られる。読み終えたときには、結局勢力図がよくわかっていなかった。「太平記を理…
ファン待望、刑事ワシントン・ポーのシリーズ5作目。生放送のトーク番組に出演中、差別的な発言をくり返すジャーナリストが突然倒れて死亡。続いて過激派Youtuberがポーたちの監視をくぐり抜けて毒殺。同時刻に過去に何度も助けてくれた病理学者ドイルが、父…
東京での生活は心を満たしてくれるけど、なにかが満たされない。常にもの足りない男女の22のTwitter(現X)文学。自分の足元を見ろよ! その手に持っているものはなんだ!? 口に含んでいるものを飲みこんでから言え! という感想は、源氏物語への思いと同じ…
心霊スポット突撃系YouTuberチャンイケこと、池田の『オカルトヤンキーch』のファンブック企画のために、廃小屋・病院・ラブホの実話怪談を再調査する……。これでは足りないので都市伝説・怪談の巨頭ネタで串刺しにしたがために、普通のエンタメ・ホラーにな…
角川ホラー文庫30周年を記念して刊行されたアンソロジー。全3巻の予定で、ベテランから新人まで読めるので楽しみ。鈴木光司は四半世紀経っても「リング」を書くのかと思わせてからの、セルフドキュメンタリー・ホラーを開拓。紹介すべき1編は一穂ミチ「にえ…
女三の宮の登場によって六条院のバランスが崩れ始める……。「若菜上」の後半から「若菜下」「柏木」「横笛」「鈴虫」「御法」「幻」「雲隠」を収録。紫の上が病に伏せ、出家への希望と、その思いを拒否する君とで暗くはある。ただ、明石の姫君の子(君の孫)…
先生が発見したのは、校庭に書かれた奇妙な模様。もしかしてUFOのミステリーサークル? 誰が? どうして? どうやって? 事件解決に動きだしたのは、4年1組の辻堂天馬・柚木陸・神山美鈴、通称「ミステリトリオ」。全ての条件がそろったとき「ぼくは読者に挑…
明石の君と出会った光源氏が京都にカムバック。政治的な立場も、女性たちとの生活も整いつつあった。が……。1000年前に鏡合わせ構造の物語を書いているから面白い。息子の夕霧がとにかく真面目で、不器用ながら雲居雁へアプローチしていく頑張りが可愛い。娘…
先生が発見したのは、プールで泳ぐ大量の金魚。誰が? どうして? どうやって? 事件解決に動きだしたのは、4年1組の辻堂天馬・柚木陸・神山美鈴、通称「ミステリトリオ」。全ての条件がそろったとき「ぼくは読者に挑戦する」。 スタートは魅力的な謎から始…
容姿、才能、明晰さに溢れた君。帝の寵愛を受けた母、桐壺の身分は低く、早い死別を迎える。新しい妃の藤壺に惹かれる君だったが、その渇望は山里で垣間見た少女へと向けられていく。のちに生涯をともにする紫の上との出会いだった。 サブエピソードを含む超…
いくつかの解説でジェフリー・ディーヴァーばりの展開と評されていたけど、いやそれジェフリー・ディーヴァー読めばよくない……? 東京各地に散りばめられた爆弾。取調室にいるダルマのような男が呟いたのは、隠し場所のヒントだった……。個性的な悪には、圧倒…
エジプト・ユーフラテスを中心とした古代オリエント地域。ここで生まれた様々な技術や嗜好品は、私たちの日常まで繋がっている。高校の授業で「パンはエジプトで生まれた」と話したら、先生に「ヨーロッパだろ」と否定されたのを思い出した。パンもワインも…
雑誌「江戸楽」にて、時代小説や歴史ものを紹介する書評欄がある。本書は様々な伏線が一つに回収される! とあったので読んでみた。深川佐賀町に住む八五郎は冴えない日々を送っているが、ある夜、噂の幽霊剣士「鳴かせの一柳斎」に出くわす。もしかすると一…
夏休みに死んだ山田が、教室のスピーカーに転生した! 声だけが残された山田と、2年E組の面々の試行錯誤が始まる……。男子高校生らしいバカさ加減と、自由さが実に青春小説。事故死の真相は少しだけミステリー。山田のために挑戦したりいたずらしたり、力の抜…
応募作と怪談作家5名による145話。祖父との思い出を書いたCOCO「影」、インドネシア人女性によるムーンハイツ「小包」がほどほどに怖い。観光地で若き母に出会う、緒音百「気ままな母」が忘れられない1話。 投稿 瞬殺怪談 怨速 (竹書房怪談文庫) 作者:黒木あ…
今、実力を発揮している現代短編ミステリーの書き手・芦沢央×将棋。自分だけの力で勝たなければならないプレッシャーと、勝利だけから得られる恍惚。被災地へのボランティアで、力量ありそうな少女が奇妙な手を指す「弱い者」がベスト。震災だからこその驚き…
何年ぶりの再読だろう。殺人のうえ失踪した夫と、残された母子の揺れを書いた「虚空の黙祷者」がシンプルな現代サスペンスとして上質だった。初読から約25年、ずっと好きな「何をするためにきたのか」と「キシマ先生の静かな生活」。夫婦生活がわかるように…