吉田千亜 原発事故、ひとりひとりの記憶 3.11から今に続くこと

2011年3月11日、東日本大震災を起点に原発事故が発生。10年少しが経った今でも、福島に残った人、福島から出た人へ、著者は取材を重ねていた。あの瞬間が分岐点となった18人の道のりを伝える。

著者の「孤塁 双葉郡消防士たちの3・11」は、震災・原発事故に関わった120名の消防士に取材した傑作だった。同じコンセプトで福島から出た人、残った人たちへ寄り添う1冊を残す。人を追うのではなく、「共に生きる」著者の思いは、手紙のような優しさが文面から醸し出される。膝をついた人は数多くいても、必ず「無力な存在で終わらない」と決意した人たちがいると、本書は教えてくれる。