岡倉徹志 アラブのゆくえ

いまなお世界の火種となるアラブ地域。聖地エルサレムを巡る争奪。パレスチナクルド人難民問題。国境線や石油を巡り未解決の難問があります。宗教・民族・国家の利益を様々な角度から光をあて、中東の平和を探ります。

著者は毎日新聞のカイロ支局長を経て大学教授を務め、80年から00年にかけて中東解説を行っていた。本書は91年に岩波ジュニア新書からの刊行で、アラブ視点で読める中東問題総解説として貴重な1冊だが、本書の更新を期待したい。報道が交錯する今、落ち着いた情報は得やすくも遠い。「マッチで火をつけ、ポンプで火を消す」欧米だが、当事者からすれば「急に放火されて、強引に消化して注意もする」存在でしかない。歴史を知れば、今すぐ信用できるわけがないだろう。「火を消してくれ。一緒に助けてくれ」と言ってもらえる国で、人でありたい。