山本草介 一八〇秒の熱量

37歳までに日本チャンピオンにならなければ強制引退を控えたボクサー・米澤重隆を、NHKドキュメンタリー作成班が追う。残された9ヶ月で、スピードもテクニックもスター性もない彼は、自身との激闘が始まる。

熱いノンフィクションだとX(Twitter)で見かけて読んだ。派遣社員として不規則な労働環境で勤務し、満たされた条件ではないのに、どうして引退しないのか。なぜリングに立って、ランク上の選手に戦う意思表示ができるのか。ジムの会長が「(胸を指し)ここ。気持ち。」と言い切るシーンで震えた。その世界でしか通じない言語で生きている男たちが格好いい。