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角川ホラー文庫30周年を記念して刊行されたアンソロジー。全3巻の予定で、ベテランから新人まで読めるので楽しみ。鈴木光司は四半世紀経っても「リング」を書くのかと思わせてからの、セルフドキュメンタリー・ホラーを開拓。紹介すべき1編は一穂ミチ「にえ…
女三の宮の登場によって六条院のバランスが崩れ始める……。「若菜上」の後半から「若菜下」「柏木」「横笛」「鈴虫」「御法」「幻」「雲隠」を収録。紫の上が病に伏せ、出家への希望と、その思いを拒否する君とで暗くはある。ただ、明石の姫君の子(君の孫)…
先生が発見したのは、校庭に書かれた奇妙な模様。もしかしてUFOのミステリーサークル? 誰が? どうして? どうやって? 事件解決に動きだしたのは、4年1組の辻堂天馬・柚木陸・神山美鈴、通称「ミステリトリオ」。全ての条件がそろったとき「ぼくは読者に挑…
明石の君と出会った光源氏が京都にカムバック。政治的な立場も、女性たちとの生活も整いつつあった。が……。1000年前に鏡合わせ構造の物語を書いているから面白い。息子の夕霧がとにかく真面目で、不器用ながら雲居雁へアプローチしていく頑張りが可愛い。娘…
先生が発見したのは、プールで泳ぐ大量の金魚。誰が? どうして? どうやって? 事件解決に動きだしたのは、4年1組の辻堂天馬・柚木陸・神山美鈴、通称「ミステリトリオ」。全ての条件がそろったとき「ぼくは読者に挑戦する」。 スタートは魅力的な謎から始…
容姿、才能、明晰さに溢れた君。帝の寵愛を受けた母、桐壺の身分は低く、早い死別を迎える。新しい妃の藤壺に惹かれる君だったが、その渇望は山里で垣間見た少女へと向けられていく。のちに生涯をともにする紫の上との出会いだった。 サブエピソードを含む超…
いくつかの解説でジェフリー・ディーヴァーばりの展開と評されていたけど、いやそれジェフリー・ディーヴァー読めばよくない……? 東京各地に散りばめられた爆弾。取調室にいるダルマのような男が呟いたのは、隠し場所のヒントだった……。個性的な悪には、圧倒…
エジプト・ユーフラテスを中心とした古代オリエント地域。ここで生まれた様々な技術や嗜好品は、私たちの日常まで繋がっている。高校の授業で「パンはエジプトで生まれた」と話したら、先生に「ヨーロッパだろ」と否定されたのを思い出した。パンもワインも…
雑誌「江戸楽」にて、時代小説や歴史ものを紹介する書評欄がある。本書は様々な伏線が一つに回収される! とあったので読んでみた。深川佐賀町に住む八五郎は冴えない日々を送っているが、ある夜、噂の幽霊剣士「鳴かせの一柳斎」に出くわす。もしかすると一…
夏休みに死んだ山田が、教室のスピーカーに転生した! 声だけが残された山田と、2年E組の面々の試行錯誤が始まる……。男子高校生らしいバカさ加減と、自由さが実に青春小説。事故死の真相は少しだけミステリー。山田のために挑戦したりいたずらしたり、力の抜…
応募作と怪談作家5名による145話。祖父との思い出を書いたCOCO「影」、インドネシア人女性によるムーンハイツ「小包」がほどほどに怖い。観光地で若き母に出会う、緒音百「気ままな母」が忘れられない1話。 投稿 瞬殺怪談 怨速 (竹書房怪談文庫) 作者:黒木あ…
今、実力を発揮している現代短編ミステリーの書き手・芦沢央×将棋。自分だけの力で勝たなければならないプレッシャーと、勝利だけから得られる恍惚。被災地へのボランティアで、力量ありそうな少女が奇妙な手を指す「弱い者」がベスト。震災だからこその驚き…
何年ぶりの再読だろう。殺人のうえ失踪した夫と、残された母子の揺れを書いた「虚空の黙祷者」がシンプルな現代サスペンスとして上質だった。初読から約25年、ずっと好きな「何をするためにきたのか」と「キシマ先生の静かな生活」。夫婦生活がわかるように…
ホラーを「楽しむ」ため、ホラーカンパニー・株式会社闇が名手を集めた最恐アンソロジー。恐怖を5W1Hでわけ、それぞれの作品に丁寧な解説を収録する。スタートは小学校を舞台にした澤村伊智『みてるよ』。感染していくような怖さを書かせれば流石。中高生向…
第74回日本推理作家協会賞を受賞した「#拡散希望」を収録。離島唯一の子ども4人がYoutuberを目指すストーリーが、島の閉鎖な様子と「今」のギャップを上手く切り取っている。一編それぞれが社会風刺になりすぎず、サスペンス性が高い。家庭教師派遣のために…
「女の友情」を書いたミステリ短篇集全5篇。漫画家を夢見る女子高生2人の距離感を緊張感高く読ませる『願わない少女』は、もう1つの「ルックバック」と呼ぶにふさわしい。違和感のある友情を読まされる気持ち悪さといったら。大矢博子の解説が素晴らしく、百…
池上彰が解説する世界情勢総まとめ。新聞を読むための副読本として大変優秀な1冊で、キーワードと情勢が復習できる。巻が増えるごとに面白みが薄れていく気がしていたが、本書は不思議と充実感があった。 知らないと恥をかく世界の大問題15 21世紀も「戦争…
刑事ワシントン・ポーと助手ティリーのコンビが人気の著者による、スパイ・アクション・シリーズが開幕。主人公は頭部の怪我によって恐怖を感じなくなった男、ベン。元連邦保安官として、かつての上司から行方不明の娘の捜索依頼を受けて捜査にのり出す。世…
書店経営が難しいと本格的に言われるようになったのは、Kindle Paperwhiteが登場してからではないでしょうか。肌感ですが。とはいえ、人件費やテナントの高騰による危機感はあったものの、経営判断までは至らなかったようだ。サービスの悪化による攻略は論外…
子どもたちの視点、気持ちを集めて50年。読売新聞に投稿された「こどもの詩」の精選集が刊行された。Twitter(現X)で紹介されていた詩「みどりちゃんへ」が美しく、興味が湧いたので読んでみた。普段から詩には触れないので、1つ1つの投稿が新鮮だった。 こ…
銭天堂をつぶすため、よどみが差し向けた怪童と紅子の勝負は引き分けに終わった。自ら勝負にでたよどみは、銭天堂のお菓子に悪意エキスを混ぜたために……。 人のネガティブな欲望を引きずりだす駄菓子がついに登場! それを食べた被害者たちの顛末を書く傑作…
京都新聞夕刊一面で著者のコラムが面白かったので読んでみた。時間だけでなく、体調や心のコンディションでまったく読めないときがある。働いれいるからじゃない! でもTwitter(現X)とショート動画でどんどん時間が消費されていく! 俺だけじゃない! なぜ…
身近なところで「1つ減っている」もしくは「増えている」と感じたら、今すぐ本書を閉じて、読書を中止してください。三津田信三と編集者・三間坂が紐解く「幽霊屋敷」シリーズ第3弾、そして最終巻でもあった。日記や音声テープといった記録された個々の怪異…
本書は読書のハウトゥも教えてくれるが、森博嗣が辿ってきた「読書経験の記録」が貴重なエッセイになっている。幼少期から思春期を通しての具体的な記述が多く、森博嗣の多くを読んできたつもりだけど初めて知る内容も多かった。「面白い本に出会う」のは自…
本の歴史が知りたくて、子どもも読めればと選んだ1冊。毎日200冊以上作られる本はどのよう工程で本になり、どこへ運ばれて行くのか。歴史から、素敵な本との出会いかたまでを教えてくれる。まさに「本について」の本だった。 本について授業をはじめます (ち…
世界最大の選挙を控える大国インド。ナレンドラ・モディが首相就任した2014年以降、脱カーストと民主化によって近代化が……と思いきや、モディ化が進んでいると説く。新聞では読みとれていなかったが、外交・政治・経済など多方面において権力の集中とヒンド…
山の怪談を得意とする著者による、実力が発揮される「鹿の葬式」「夢ヶ岳」などを収録。同時に、記憶に残す力は現代都市怪談でも十分。修学旅行の京都で飛び降り自殺を見てしまう「ある夜のこと」がしっとり怖い。北関東の山道で見かけた「奥の院」は、拭え…
オカルト溢れる世界を旅するシリーズも9作目。一貫して都市伝説と現代怪談の愛を書きながら、それぞれの性を模索してきた紙越空魚と仁科鳥子。1つのクライマックスに至った満足感もありつつ、そのあとの心境を瑞々しく書いていて可愛い。散々巻きこんでお世…
給与明細の納税額を見ていると、国が上で私たちが下で、収めているものだと思い込んでいた。しかし本書では、納税は「義務」ではなく「権利」だと教えてくれる。ヨーロッパ、とくにフランスの民主化から始まった税制と、日本の近代化によって進められた税制…
X(Twitter時代)にて、「女三代記が好きなら」と教えてもらった韓国小説が、今年ベスト級だった。寒村から飛び出し、魚売りに拾われた少女クムボクが波乱万丈の人生を送るパートが3分の2を占める。続いて、言葉は発せないものの並外れた怪力を持つ娘チュニ…