2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

白蔵盈太 実は、拙者は。

雑誌「江戸楽」にて、時代小説や歴史ものを紹介する書評欄がある。本書は様々な伏線が一つに回収される! とあったので読んでみた。深川佐賀町に住む八五郎は冴えない日々を送っているが、ある夜、噂の幽霊剣士「鳴かせの一柳斎」に出くわす。もしかすると一…

金子玲介 死んだ山田と教室

夏休みに死んだ山田が、教室のスピーカーに転生した! 声だけが残された山田と、2年E組の面々の試行錯誤が始まる……。男子高校生らしいバカさ加減と、自由さが実に青春小説。事故死の真相は少しだけミステリー。山田のために挑戦したりいたずらしたり、力の抜…

黒木あるじ ほか 投稿 瞬殺怪談 怨速

応募作と怪談作家5名による145話。祖父との思い出を書いたCOCO「影」、インドネシア人女性によるムーンハイツ「小包」がほどほどに怖い。観光地で若き母に出会う、緒音百「気ままな母」が忘れられない1話。 投稿 瞬殺怪談 怨速 (竹書房怪談文庫) 作者:黒木あ…

芦沢央 神の悪手

今、実力を発揮している現代短編ミステリーの書き手・芦沢央×将棋。自分だけの力で勝たなければならないプレッシャーと、勝利だけから得られる恍惚。被災地へのボランティアで、力量ありそうな少女が奇妙な手を指す「弱い者」がベスト。震災だからこその驚き…

森博嗣 まどろみ消去 MISSING UNDER THE MISTLETOE

何年ぶりの再読だろう。殺人のうえ失踪した夫と、残された母子の揺れを書いた「虚空の黙祷者」がシンプルな現代サスペンスとして上質だった。初読から約25年、ずっと好きな「何をするためにきたのか」と「キシマ先生の静かな生活」。夫婦生活がわかるように…

株式会社闇 編集 ジャンル特化型 ホラーの扉 八つの恐怖の物語

ホラーを「楽しむ」ため、ホラーカンパニー・株式会社闇が名手を集めた最恐アンソロジー。恐怖を5W1Hでわけ、それぞれの作品に丁寧な解説を収録する。スタートは小学校を舞台にした澤村伊智『みてるよ』。感染していくような怖さを書かせれば流石。中高生向…

結城真一郎 #真相をお話しします

第74回日本推理作家協会賞を受賞した「#拡散希望」を収録。離島唯一の子ども4人がYoutuberを目指すストーリーが、島の閉鎖な様子と「今」のギャップを上手く切り取っている。一編それぞれが社会風刺になりすぎず、サスペンス性が高い。家庭教師派遣のために…

芦沢央 今だけのあの子

「女の友情」を書いたミステリ短篇集全5篇。漫画家を夢見る女子高生2人の距離感を緊張感高く読ませる『願わない少女』は、もう1つの「ルックバック」と呼ぶにふさわしい。違和感のある友情を読まされる気持ち悪さといったら。大矢博子の解説が素晴らしく、百…