シリーズ3作目にしてホラー要素は作中民話だけになったが、そこがまた怖い。怖いうえにトリックの要になっているのには脱帽。大技小技。1つのトリックをまるで万華鏡のように魅せる、三津田信三『首無の如き祟るもの』は本当に素晴らしい体験を与えてくれる大傑作だ。片田舎の一族に伝わる奇妙な風習と、伝承が物語とトリックのポイントとなる点は今までのシリーズと変わらず。消失事件、密室殺人、そして首無し死体は、村に伝わる首無の仕業か、淡首様の祟りなのか……?
推理から解答といった流れで背筋が凍る思いもさせられたが……。まさにトリックは道具であるというべきか、これほど悪意あるラストを見せつけられつつ、してやられた! な気持ちよさ。ピースそのものが奇妙だが、一枚絵にした瞬間の戦慄とでも呼ぶべきか。しかし、そのピースを繋げていった本人こそがもっとも恐ろしい存在だった。
- 作者: 三津田信三
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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