ドナルド・E・ウェストレイク 泥棒が1ダース 現代短篇の名手たち3

天才的な計画性によって窃盗を行うジョン・ドートマンダー。どんな注文も思慮の末に受け、軽々と計画を終わらせるはずが、何故か予定外のことに巻き込まれてしまう。そんな彼が窮地を脱するために行うこととは……。
どことなく暗い雰囲気が続いた<<現代短篇の名手たち>>だが、ここでクスッとした笑いに満ちたユーモア・ミステリ短篇全12編。銀行強盗に入ったはずが、すでに銀行強盗がいた「悪党どもが多すぎる」。舞い降りた幸運から、様々な災難に巻き込まれる「今度は何だ」。元泥棒の絵描から盗みを頼まれる「芸術的な窃盗」などは、当にユーモアの魅力が光るプロットだ。あらぬ疑いをかけられる「真夏の日の夢」がもっともミステリらしい1作で、読み終わってみても1ダース分の面白さが気持ちよく残る。