我孫子武丸 殺戮にいたる病

猟奇殺人をくり返し、被害者の一部を持ち帰る蒲生稔。一方、妻を亡くした元刑事は、被害者の妹と独自に事件を追うが、犯人の姿は見えてこない。白熱するワイドショーを見た主婦は、自分の息子が犯人ではないかと疑ってしまう。そして息子の部屋から、生臭いビニール袋を見つけてしまい……。
再読することによって、ここまで緊迫感の増すミステリも、そうそうないだろうと感じた。初読では、サイコキラー・母親・元刑事の距離感を一気に読まされるかたちだった。三者の視点によって物語は進んでいくが、元刑事の役割に疑問が浮かんだ(が、最後のために間違いなく必要な1人だ)。再読することによって、ミステリの構造などを考えさせられる、教科書的な意味で傑作だといいたい。

殺戮にいたる病 (講談社文庫)

殺戮にいたる病 (講談社文庫)