葉真中顕 絶叫

孤独死で発見された鈴木陽子。彼女は好景気でわく日本の平凡な家庭に生まれ、平凡な人生を送るはずだった。偏った愛情を注ぐ母から逃げられず、縁を切るような仕事をし、彼女は一歩ずつ光の届かない人生へ。それでも戻れる希望はあった。人を殺めるまでは……。

時代と性の狭間に落ちていく女主人公の味は蜜の味でして、いくらでもゴクゴク飲める。『ロスト・ケア』と同じく一気に読めて、ミステリーとして仕上がっている。あまりにも魅力的で夢中でむしゃぶりついていたはずなのに、一声かけられるとお婆ちゃんのヘチマのようなオッパイを吸っていることに気づくような……。なんつうか嫌味じゃなくてさ、分かってくれる人いるよね?

絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)