東野治之 聖徳太子 ほんとうの姿を求めて

聖徳太子とはどのような人物で、何をなし得てきたのか。憶測ではなく、残された資料から読み解く聖徳太子像。なぜ歴史の中で神格化され、今日の論争が起こってきたかを解説する。
日本史に興味のある中高生が本書に触れていたら、とても刺激になるであろう1冊。実在する情報を読み解き、冷静に、時に激しく展開する聖徳太子像が、ある意味で新しい。正直それは熱論すぎでは? と思う箇所もあるけど、聖徳太子がどういう存在だったかは間違いないだろう。フリガナの少なさは難だったが、とても読み応えのある岩波ジュニア新書だった。

原作・弐瓶勉 小川一水・飛浩隆・他 BLAME! THE ANTHOLOGY

弐瓶勉が生み出した、無限に建築増殖し続ける世界を舞台に、現代SF作家が書くトリビュート作品集。それぞれBLAME! の世界観を満喫させてくれるけど、飛浩隆「射線」の飛躍力とクオリティは異常でしょう。「射線」は1ページ目で「えらいもんを読んでいるぞ」と引っ張られる力に震えてしまった。なんだこれは。なんていう作家なんだ。

デイヴィッド・ハンドラー 笑いながら死んだ男

作家ホーギーが受けた依頼は、元超売れっ子コメディアン、ソニー・デイの自伝執筆だった。不幸にも元"全米を沸かした者"同士、打ち解けることはなく、インタビューもうまく進まず、ホーギーは命を狙った脅迫までされてしまう。どうして誰かが、何に、嘘をついているのか。
全米を揺るがしながらも2作目が書けなくなってしまった作家ホーギー・シリーズの1作目。ゆったりとしたやや緊張感に欠ける進行だが、真相がとてもよかった。誰も彼もが真実をはぐらかす、たった一つの悲しい理由。森博嗣がS&Mシリーズの雰囲気はここにあると書いていたので少しずつ読んでいるけど、絶版なのは本当に惜しい。

笑いながら死んだ男 (講談社文庫)

笑いながら死んだ男 (講談社文庫)