井上栄 感染症 増補版 広がり方と防ぎ方

モノの移動、世界中で開催されるコト消費のためのヒトの移動。病原菌が世界に拡散するリスクは劇的に変化している。本書は伝染病対策の歴史と伝播経路を中心に、遮断法を提案する。新型インフルエンザはどのようにして広がり、また止められたのか。新型コロナウィルス感染症への考察を追加した増補版。

感染症の歴史を知りたく数冊読んでいますが、基本は「手洗い・うがい・マスク」なんだと教えてくれます。生モノや貝類を避けるなどもっと厳重な対策はあるけど、とりあえず基本を実行するのみ。SARSでは水やトイレが、今回ではコミュニケーションが伝播経路となった考察が面白い。新型コロナウィルス感染症については情報不十分なため、その点注意して手にしてください。読むなら優しい歴史書の岡田晴恵『人類vs感染症』がオススメ。

ディーリア・オーエンズ ザリガニの鳴くところ

ノース・カロライナ州の未開発な土地で暮らす「湿地の少女」に、ある青年殺害の疑いがかけられた……。1950年代後半、湿地に建つぼろ屋で育った少女カイアは、散り散りになった家族を待ちながら、6歳から1人で暮らしていた。鳥や貝、植物などの自然から生き残りの術を学び、読み書きを教えてくれる少年テイトと出会う。2人は生きる世界の違いから疎遠になるが、殺人事件を機会に近づいていく……。

まだまだ黒人差別根強い1950年代から、社会情勢が大きく変わろうとする70年までのアメリカが舞台。大自然で成長する少女がただただ美しい。湿地の緑香る風を受けているような、何時までも読んでいたい物語だった。事件が本格的に動く後半は緊張感高く、法廷シーンは迫力につられて一気読み。今年の話題作に触れられてよかった。

ザリガニの鳴くところ

ザリガニの鳴くところ

鈴木直道 やらなきゃゼロ! 財政破綻した夕張を元気にする全国最年少市長の挑戦

若い東京都職員が、財務破綻した北海道夕張市の市長に名乗り出た。当選後、全国最年少市長が直面した難題の数々。変えられない財政、全国一の高齢化率、削りきれない最低の行政サービス。どうすれば解決できるのか。地域再生にチャレンジした若き市長の奮闘記。

新型コロナ感染症の状況下、北海道知事の記者会見を見て、同世代にこんな人がいるのかと驚いた。応援できないかと読んでみた。市長選への出馬は夕張市に出向したことがきっかけではあるけど、悪く捉えれば綺麗に書かれすぎではないだろうか。石原慎太郎の存在や、地元民の後押しがあったのは確かだろうけど、北海道民の生の声を聞きたい。しかし北海道知事として、この危機に直面するとは。気になった人は岩波ジュニア新書で読んでほしい。