小川一水 老ヴォールの惑星

小川一水『老ヴォールの惑星』を読む。評判以上に面白い。表題作だけが再読してもどうしても分からなくて、しかしネタが分からないから面白くない、というのではなくて、最後に収録されている「漂った男」なんか不思議な世界観と主人公の奇妙さに惹かれます。期限なし迷宮刑務所「ギャルナフカの迷宮」にしても、現状が日常とどれだけかけ離れた極限状態か、が分かる話ほど魅力的に感じるのは僕だけでしょうか。かなり刺激を受けた短編集ですが、どれもラストが不思議と臭い。臭いというよりは、希望に満ち溢れているので、一編ぐらいは絶望的ないやらしさを含んだ作品が収録されていたほうが効果的に映えていたのかもしれません。個人の好みですけど。(2005年08月)