団鬼六 真剣師小池重明の光と影

職に就いては逃げ出し、3人の人妻と駆け落ちし、逃亡と放浪をくり返した男・小池重明。しかし彼が将棋を捨てることはなかった。”新宿の殺し屋”と呼ばれ、賭け将棋時代終盤の伝説、数々のプロを倒した真剣師の短い生涯。
ロンドンの古本屋で投げ売られているのを拾ってしまうほどの名作を再読。読んだのは幻冬舎版だが、小池重明『自叙伝』を収録した小学館版を。誰に薦められたかをよく覚えている1冊で、とても印象に残っていた。将棋じゃなくてもいい小説なのに、将棋でなければ生まれなかったドキュメンタリで、伝説の人物たちが活き活きと書かれた傑作だ。『ハチワンダイバー』より過去に、こんな事実があったのかと楽しむのもあり。ノンフィクションだとは思えない将棋世界とその政治を堪能してもらいたい。

真剣師小池重明の光と影 (小学館文庫)

真剣師小池重明の光と影 (小学館文庫)