ブライアン・グルーリー 湖は餓えて煙る

ある冬の夜、湖に打ち上げられたスノー・モビル。これは十年前に事故死した英雄、少年アイスホッケーの監督のものなのか? あの事故は隣接する湖だったのではないか……。取材にのり出した元選手、地元新聞記者のガスは、知らぬうちに町の暗部へと踏み込んでいく。一時は栄えた町の衰退と、彼らが愛していた友人たちと、最強チームの過去に。
『卵をめぐる祖父の戦争』を読まなければ出会わなかった。アメリカ探偵作家クラブ賞優秀新人賞候補だったが、アンソニー賞最優秀ペイパーバック賞、バリー賞最優秀ペイパーバック賞を受賞。元新聞記者で911事件ではピューリッツァー賞受賞に大きく貢献した作家ブライアン・グルーリーのデビュー作にして、11年に読んだベストに挙げたい作品だ。かつての育った町を飛び出し、ピューリッツァー賞を目前にしてある事件から故郷に帰ってきた新聞記者ガス。忘れ去られた栄光を蒸しかえす事件から、チームメイトたち、そして自分自身の過去を洗っていく。翻訳もののハードル高さ(キャラの多さとニックネーム)はあるが、それでも魅了して止まない彼らの語り、白熱のホッケー試合。衰えた現在と輝いた過去、住人と新聞記者、家族とガスなどの対比で成りたつ、魂をえぐられるようなミステリだ。

湖は餓えて煙る (ハヤカワ・ミステリ1839)

湖は餓えて煙る (ハヤカワ・ミステリ1839)