ロデ&セーアン・ハマ 死せる獣 ― 殺人捜査課シモンスン ―

デンマークコペンハーゲン警察殺人捜査課課長コンラズ・シモンスンは、休暇から呼び戻された。学校の体育館に、無残に刻まれた5つの死体が吊るされていたからだ。惨殺された身元不明の被害者たち、しかし彼らは幼児性愛者だった? マスコミと世論の声が犯人援護へと高まる中、情報は隠され、捜査は難航し始める……。
合同感想企画第1回はポケミスから、新人兄妹作家ロデ&セーアン・ハマ『死せる獣 殺人捜査課シモンスン』を。
@view_03 本書の事件のテーマは小児性愛をめぐっており、読んでいる内に主人公(であろう)で事件解決の指揮を担う警部補・コンラズよろしくどんよりとして、休みがほしくなる。が、世に拡散していく小児性愛者への正義の狂騒と、地を這う捜査対比が相まって、どう決着がつくのか、そしてまた手に取る……。登場人物の誰もがすっきりしない事態を大小抱え込んでいて、このままじゃどん詰まりで人生は終わり、自分以外のことなんか知るもんか、……そんな諸々の考えたちがまごつく中、事件を解決していく感情の道筋--とっとと楽になりたい(あの人を楽にさせたい) 、この感情へ小説が至ったところに、一番の読みごたえを感じた。きっとこれで良い、というラストのすっきりさは、好み。続編が翻訳されたら、上司であるコンラズの前でいろんな顔を見せるパウリーネ目当てで読みます!(そこ?)
@satoruyoshino 北欧ミステリーって性犯罪ばっかりじゃない?っていうのはともかく、なじみのない人名・地名、いまひとつ立っていないキャラを乗り越えた中盤以降はぐいぐい読ませる。五つの死体の配置にはありもしない新本格魂が揺さぶられたけど、読み終わってみたらあまり関係なかったね。二人で書いているせいなのか、客観的すぎて入り込めない感もあるけど、いい年の兄妹がふたりでこれを書いてるかと思うとそれはそれで胸が熱くなる。見た目含めたキャラクターの描写にもっと力を入れれば星五つ。待て次号、いやむしろ期待を込めてお待ちしております。
@motoshou そこかしこが不明確な物語運びで、えらく削りの荒い小説だった。でも北欧警察組織もので、大筋はあの名作近未来SFアニメと同じじゃないか!? というだけで僕は楽しい。可愛いパウリーネちゃん(新米刑事)や、ピザを選ぶような名台詞もあって、この輝きは見逃せない。次回作を期待して待つのみ。

死せる獣―殺人捜査課シモンスン (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

死せる獣―殺人捜査課シモンスン (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)