葉真中顕 絶叫

孤独死で発見された鈴木陽子。彼女は好景気でわく日本の平凡な家庭に生まれ、平凡な人生を送るはずだった。偏った愛情を注ぐ母から逃げられず、縁を切るような仕事をし、彼女は一歩ずつ光の届かない人生へ。それでも戻れる希望はあった。人を殺めるまでは……。

時代と性の狭間に落ちていく女主人公の味は蜜の味でして、いくらでもゴクゴク飲める。『ロスト・ケア』と同じく一気に読めて、ミステリーとして仕上がっている。あまりにも魅力的で夢中でむしゃぶりついていたはずなのに、一声かけられるとお婆ちゃんのヘチマのようなオッパイを吸っていることに気づくような……。なんつうか嫌味じゃなくてさ、分かってくれる人いるよね?

絶叫 (光文社文庫)

絶叫 (光文社文庫)

オキシタケヒコ おそれミミズク あるいは彼岸の渡し綱

山中の牢獄に囚われた少女、ツナはぼくが行くと微笑んで迎えてくれる。「ひさしや、ミミズク」。怖い話しを聞かせる2人の関係も10年が経つ。しかしそんな異常な日常は突如揺さぶられる。ぼくが関わっている世界、これは夢か現か。

Twitterで話題になっていたので読んだけど、全然合わなかったとだけ。そんな自分に残念。

恩田陸 蜜蜂と遠雷

芳ヶ江国際ピアノコンクールを制したものは、S国際ピアノコンクールでも優勝する。若いピアニストたちだけでなく、ベテラン審査員たちも認めるジンクスをもったコンクールに、稀に見る天才たちが集まる。著名なピアニストが推薦する、ピアノを持たない無名養蜂家の少年。かつてコンクールを総なめしたものの、13歳で急遽引退してしまった少女。ピアノ人生最後のコンテストに挑む楽器店サラリーマン。名門音楽院から優勝候補と呼ばれる青年。審査から本戦まで、才能を持った人たちの苦悩と喜び。

天才はいかにも天才だし、審査員の鋭さが、まるで読者まで理解できるかのように刺激的に読ませる。そして登場する人々の疲労感までシンクロしていくようで、中盤以降がめちゃくちゃしんどい。総じて脇役まで際立ち、誰もが輝いている素晴らしい小説だった。最後はもっとパーティー感欲しいんだけど、あっさり書くのが恩田陸なのか?

蜜蜂と遠雷 (幻冬舎単行本)

蜜蜂と遠雷 (幻冬舎単行本)