清田隆之 よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門

恋話収集を行うユニット桃山商事の代表が気づいた、女性に残念だと思われてしまう男性の傾向や問題点。そこから浮かび上がった男女の見ている風景の差異とは。より良い関係を築くため「心の身だしなみ」を整える方法を模索する。

会社内ジェンダー論の記事で推薦されていたので読んでみた。男女の認識差異はなるほどと思い、注意せねばと思った次第(女性に、というより自分の生き方に対して)。しかし心底驚いたのは、私が感じていた生きにくさが「ホモファビア」の一言で書かれていたこと。男ばかりの組織に存在する差別やモラルの低下、それを寛容する空気! 違和感は俺だけじゃないのか! 感じていたモヤモヤがわかって、とても救われた。

よかれと思ってやったのに  男たちの「失敗学」入門

よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門

小川哲 嘘と正典

世間から忘れられたマジシャンが最後に挑むトリックはタイムトラベル。その舞台を目の当たりにした姉弟の戸惑いを書く「魔術師」。本国からの指令を待ちながら共産主義の消滅を企てるCIA工作員と研究者の孤独な戦い「嘘と正典」など6編を収録。

Kindle版「魔術師」が無料公開されているので、そのまま今すぐ読んでほしい。伝えるべき言葉はそれだけです。

嘘と正典より「魔術師」無料配信版

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お葬式へ行く電車の中で「魔術師」を読み始めたのだけど、参列の待ち時間を使ってまで読み耽ってしまった。最大速度で飛び出すジェットコースターに乗って、そのまま空中に放り出されるような快感だった。ダビスタSF「ひとすじの光」や音楽SF「ムジカ・ムンダーナ」も不器用な親子の物語で好きなんだけど、「魔術師」の体験は別格。

嘘と正典

嘘と正典

谷川ニコ 辻真先 青崎有吾 相沢沙呼 円居挽 私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 小説アンソロジー

モテないし、小説になる! 黒木との親交が深まる根元陽菜と、距離が遠まっていると感じる岡田茜の感情を書いた青崎有吾「前髪は空を向いている」。地味な私・夏帆と接してくれる秀才美少女・加藤明日香の出会いから、揺れる心情を散りばめた相沢沙呼夏帆」など、5人の作家による短編化アンソロジー

薦められて読んだときは「かんべんしてくれよ」だったけど、遊園地を舞台にした傑作13巻に出会ってから、小説アンソロジーを読むまでになってしまった。それぞれ原作の空気感を崩さず素晴らしい。中でも円居挽「モテないしラブホに行く」が、ゆりもこ百合百合ミステリーで俺歓喜! 心が溶かされるようなアリバイトリックだった。読者ゾーンが狭すぎる気もするが、入れたことに感謝しかない。