モンゴメリ 赤毛のアン

カナダのプリンス・エドワード島にやってきた孤児アン。男手を望んでいたマシューとマリラの兄妹は、空想豊かな赤毛の少女に困惑をする。しかし学校生活や人との交流を通して少しずつ心を開いていく。季節の移ろい豊かに成長するアンの姿を書く。

ドラマ『アンという名の少女』を見て原作を読んでみた。ドラマも草花や景色を意識した構成になっているけど、原作はもっと情報豊かで、時代背景や宗教色、それぞれの心境が書かれて読み応えがすごい! 当時の社会情勢や引用元が巻末で補足され、まるで北米史の教科書のようだ。養母となるマリラが言葉少なで堅物なだけに心を開いた愛を含んだ一言が熱い。終盤、残された時間を意識した心理描写に涙をこらえきれなかった。この年で読めてよかった。

赤毛のアン (文春文庫)

赤毛のアン (文春文庫)

柴田治三郎 モーツアルト 運命と闘った永遠の天才

数々の伝説を残した天才音楽家モーツァルト。非凡な才能は確かだが、彼に干渉し続けた父親はよき教育者か、過干渉か。けっして明るくない生活の中で話題作を作曲しながら、宮廷・教会と上手く付き合えなかった。残された多くの手紙から35才の生涯を閉じた男の姿を追う。

ちくまプリマー新書から岡田暁生『よみがえる天才3 モーツァルト』が出版されたので、岩波ジュニア新書の本書と合わせて読んでみた。クラシック音楽界の巨匠というと芸術家のイメージがあるが、その実態は契約制の組合(ギルド)だった。現代日本の芸道もそうであることに気づかされる(彼らは芸術家でありながら、組織として振舞う)。彼らは映画の記憶もあって華やかなイメージがあったが、教育パパの影と、手紙に書かれたプライドの悲しさよ……。最初から終わりまで心臓が痛む本だった。

ウェルズ恵子 魂をゆさぶる歌に出会う アメリカ黒人文化のルーツへ

アメリカに渡ってきた黒人たちは宗教や労働、過酷な生活文化と交わることで、新たな音楽を生み出してきた。大地と先祖から受け継いだ魂をゆさぶる歌から、社会背景を読み、アメリカ黒人史を解説する。

マイケル・ジャクソンの登場がどれだけ世界文化に大きな影響を及ぼしたから始まる。ここがとにかく面白い。幼少期に見た「Thriller」の怖さ、メディアの内容が好きではなかったので避けていたけど、「Beat it」のMVを見て、そのテーマ・バックグラウンドを読んで感動した。マイケルのことをもっと知りたくなり、伝記的な本があれば読んでみたい。