柴田治三郎 モーツアルト 運命と闘った永遠の天才

数々の伝説を残した天才音楽家モーツァルト。非凡な才能は確かだが、彼に干渉し続けた父親はよき教育者か、過干渉か。けっして明るくない生活の中で話題作を作曲しながら、宮廷・教会と上手く付き合えなかった。残された多くの手紙から35才の生涯を閉じた男の姿を追う。

ちくまプリマー新書から岡田暁生『よみがえる天才3 モーツァルト』が出版されたので、岩波ジュニア新書の本書と合わせて読んでみた。クラシック音楽界の巨匠というと芸術家のイメージがあるが、その実態は契約制の組合(ギルド)だった。現代日本の芸道もそうであることに気づかされる(彼らは芸術家でありながら、組織として振舞う)。彼らは映画の記憶もあって華やかなイメージがあったが、教育パパの影と、手紙に書かれたプライドの悲しさよ……。最初から終わりまで心臓が痛む本だった。