M・W・クレイヴン ストーンサークルの殺人

イングランド北西、カンブリア州のストーンサークルで連続して焼死体が発見された。“イモレーション・マン” による3件目の犯行には、停職中の国家犯罪対策庁NCA捜査官「ワシントン・ポー」の名前が刻まれていた。停職を解かれたポーは捜査に合流するが、地元警察に拒まれ苦戦する。さらに新たな死体が発見され、犯人からポーにメッセージが届く……。

英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールドダガー賞を受賞した、イギリス版FBIの物語。スケールと展開はシリーズ1作目らしい既視感こそあるが、最後の一絞りが物語に緊張感を与えて素晴らしい。主人公ポーはエリート独自の飛躍した思考で、組織や地元警察と様々な摩擦を生むんでいく。しかし天才でポンコツの相棒ブラッドショーがとにかく可愛い。過酷な事件も彼女の言動で癒される。

アンソニー・ホロヴィッツ メインテーマは殺人

殺された資産家の老婦人は、まるでそうなることを知っていたかのように、その日に葬儀の手配を済ませていた。作家のわたし、ホロヴィッツは元刑事ホーソーンの捜査を手伝い、本にまとめる計画を進める。気まぐれな探偵の助手を務めるうちに過去の事故に気づき、被害者の意外な姿が浮かび上がるが……。

この筋立てからこの犯人。当たりまえなんだけど、終盤になって気づかされる犯人という意外性。メインの骨格のために付いた筋肉や贅肉のボリュームがほどよく、気さくで終始微笑んでいる中年男性のような作品だ(性格はとても残酷なやつだけど)。バディものとしての塩梅もよく、楽しい時間だった。シンプルでミステリーの気持ちよさに溢れた1作。続編も読もう。

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

メインテーマは殺人 (創元推理文庫)

有吉佐和子 紀ノ川

絶対的な祖母に育てられた花は、紀ノ川の流れにそって川下の集落に嫁いでいく。男のように豪快で、時代の一歩先を歩もうとした文緒。病弱ながら戦争を乗り越え、変わりゆく紀ノ川を見つめる華子。紀州和歌山の素封家を舞台に、明治から始まる女三代記。

チョ・ナムジュ「82年生まれ、キム・ジヨン」の感想から、Twitterにて女三代記として教えてもらった1作。桜庭一樹赤朽葉家の伝説」も同じく女性の大河小説に家と土地が絡むとたまらん。「悪女について」で有吉佐和子と出会い、年をとっていく女の腹の底の書きかたが本当上手い。著者の作品は少しずつ読んでいこう。

紀ノ川 (新潮文庫)

紀ノ川 (新潮文庫)