吉田千亜 原発事故、ひとりひとりの記憶 3.11から今に続くこと

2011年3月11日、東日本大震災を起点に原発事故が発生。10年少しが経った今でも、福島に残った人、福島から出た人へ、著者は取材を重ねていた。あの瞬間が分岐点となった18人の道のりを伝える。

著者の「孤塁 双葉郡消防士たちの3・11」は、震災・原発事故に関わった120名の消防士に取材した傑作だった。同じコンセプトで福島から出た人、残った人たちへ寄り添う1冊を残す。人を追うのではなく、「共に生きる」著者の思いは、手紙のような優しさが文面から醸し出される。膝をついた人は数多くいても、必ず「無力な存在で終わらない」と決意した人たちがいると、本書は教えてくれる。

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中田永一 彼女が生きてる世界線 3 失われた生存ルートを求めて

サラリーマンの僕が転生したのは、大好きなアニメ「きみある」の世界。悪役令息・城ヶ崎アクトに転生した僕は、最終回で死ぬヒロインのために全力を尽くす。残された写真から、シナリオに書かれなかった伏線に気づいたアクト。皆んなの力と全ての権限を使ってハルを救ってみせろ!

中田永一による書き下ろし転生小説が完結! 世界改変をする悪役令息、最高でした! 巻がが進むほど分厚くフォントが小さくなり、起承転転結結結結な構成は読み応えあり。公式がX(Twitter)で匂わせているのはスピンオフか続編か。皆んなで遠足に行ってお弁当を食べるの読みたいです。

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梨 かわいそ笑

ネットで出会った友人の一室で。ネット掲示板に貼られたQRコードから。インタビューの書き起こしデータ。出典不明の心霊写真。また届いた匿名のメール。「死んだ人のことはちゃんと可哀想にしてあげなきゃ駄目でしょう。」

朝日新聞で新鋭モキュメンタリーと紹介されていたので読んでみた。どこかが共通する怪異の断片集で、ネット怪談のその先を書いた物語。本から飛び出してくるような恐怖を最後の最後にくり出す。油断もあって悲鳴をあげてしまった。

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