フレデリック・フォーサイス シェパード

シティで堅実な仕事をしてきたサミュエルは、電車で拾った個人情報誌からある女性と交流する。しかし、それが彼の人生を狂わせることになり……(「ブラック・レター」)。抜群のセンスで巨万の富を得た男は、一人の女に惚れてしまう。彼女の冴えない夫を消すためにプロの殺し屋を雇うが……(「殺人完了」)。1957年、クリスマス・イヴの夜にドイツからイギリスへと飛び立った青年だったが、計器の不良から発生した濃霧の帰還を強制される。しかし突如、旧式爆撃機”シェパード”が現れ……。表題作他2作を収録したフォーサイス入門の短編集。
短編集として読むべき本ではなく、フォーサイス入門もしくはフォーサイス分を補充するための1冊だ。というと誤解を生むとは分かっていて、どれも面白い短編だと書いておきたい。『ジャッカルの日』(感想)フォーサイスの素晴らしさを目の当たりにした僕で、この短編集でもノンフィクションとフィクションの壁をなくした物語に震えてしまった。一人の男が覚悟してからの冷淡な行動力、殺し屋の計算された行動などは、僕の経験不足とはいえ、そうそう他で読めるものではないだろう。フォーサイスでしか読めないだろうと覚悟させる、まさに惚れる瞬間を味わえるだろう。

シェパード (角川文庫)

シェパード (角川文庫)