アンデシュ・ルースルンド ベリエ・ヘルストレム 制裁

護送中の幼女連続殺人犯が2名の刑事に暴行を加えて逃走。かつて捜査に関わったベテラン警部グレーンスは再び犯人を追うことに。一方、愛娘を保育園に送った作家フレドリックはテレビを見て驚愕する。園前に座っていた保護者のような男性は逃走犯なのか? 娘の元に駆けつけるフレドリックだが……。

『熊と踊れ』のアンデシュ・ルースルンドのデビュー作。それ以上に読み終えた時の充実感ゼロ(絶賛)。初っ端からガツガツ読ませにくるんだけど、誰かに愛着をもったら負け……。父も、殺人犯も、幼女を見る様子が生々しく、それぞれの愛は全く別なのに似ているのはどうしてなのか。全体に漂う性犯罪者への嫌悪感・差別が相まって、緊張感と悲しさが止まらない。もともと武田ランダムハウスジャパンから出版されていた作品に光を当ててくれてありがとう御座います。グレーンス警部が好きではないけど続きが読みたい。

制裁 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

制裁 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

京極夏彦 姑獲鳥の夏

東京、雑司ヶ谷にある医院から奇妙な噂が聞こえてきた。そこには娘がおり、20ヶ月も身籠っているという。どの夫は密室の書斎から消えてしまったという。事件に関わってしまった文筆家・関口は、榎木津、京極堂に事件解決の協力を求める。この世に不思議なことなど何もない……。

妻の妊娠をきっかけにノベルス版で再読。これと森博嗣を読んでいなかったら、今の僕はなかっただろうなあ。と15歳からの20年がフラッシュバックして真っ青。いしいひさいちのパロディはしっかり覚えているのに、大筋は間違って覚えている始末。

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

米澤穂信 インシテミル

アルバイト情報誌に掲載された時給1120百円。誤植とも思われた高額の被験に応募し、選ばれた12人にはそれぞれの思惑があった。地下施設に収容された彼らに用意されていたものは、ミステリーのガジェットと殺人犯人当てゲームだった……。

どストレートのミステリーが読みたい俺の気持ちに応えてくれ! と久しぶりに米澤穂信。もしかしてデビュー作以来かも? クローズドサークル型で「そして誰もいなくなった」系の作品は、犯人当てというより大枠をどう見せるかがポイントになる。逆算した物語にもなるので、そこが見え見え。今作は粗さを物語でカバーしているけど、良くもコミカルで、悪くもパワフル。

インシテミル (文春文庫)

インシテミル (文春文庫)