宮内悠介 彼女がエスパーだったころ

百匹目の猿、スプーン曲げ、水への伝言、終末医療……。疑似科学を追うわたしが見ているものはオカルトなのか、真実なのか。

オカルトを追うフリーライターが遭遇する奇々の連作短編集。新聞の書評欄、Twitterで宮内悠介が常々話題になるので読んでみた。みんな好きだよね。デビュー作の囲碁ネタは震えたけど、結局SFそんなに興味ない自分に気づくという……。今回もピンとこなかったけども、終末医療とプラシーボをテーマにした「薄ければ薄いほど」が素晴らしかった。信仰とも治療とも呼べない施設の中で、死を目前にした人たちが集まり、とても静かに死んでいく様子は、小説でしか味わえないだろう。

彼女がエスパーだったころ (講談社文庫)

彼女がエスパーだったころ (講談社文庫)

泰丘良玄 理工学部のお坊さんが教えてくれた、こころが晴れる禅ことば

日々是好日、喫茶去、天上天下唯我独尊など、どこかで聞いた見たことのある禅語の数々。理工学部出身の若手僧侶が優しく説く。

街角や、お店にかけてあるお軸が好きで読んだり見たりするんだけど、禅語も多いので参考書代わりに読んでみた。それぞれの言葉の意味がわかりやすく、いい入門書だ。最後の「天上天下唯我独尊」の切れ味は、シンプルではあるけど読む価値あり。しかし理工学部は全然関係なかったなあ。

理工学部卒のお坊さんが教えてくれた、こころが晴れる禅ことば

理工学部卒のお坊さんが教えてくれた、こころが晴れる禅ことば

白河三兎 ふたえ

学級ヒエラルキーの底にいるノロ子・ジミー・劣化版・美白・タロットオタク。それぞれ孤独な彼らに、誰にも従わない手代木麗華が加わった「ぼっち班」。手代木のワガママに振り回される修学旅行の1日が始まる。それぞれの視点が1つになる時、切ない真実を共有した彼らは……。

いわゆるジャケ買い。何かに気づいてしまったような表情がとても良かった。その何かとは……。メフィスト賞作家の青春ミステリーで、それぞれ恋をしたり、葛藤があったり、モヤモヤが手代木を交えて解消されていく様子が気持ちいい。ミステリーとしては好みではなかったとだけ。

ふたえ (祥伝社文庫)

ふたえ (祥伝社文庫)