森博嗣 人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly?

キョートで行われる国際会議で、ウォーカロン・メーカの連合組織WHITEは、人口増加に資する研究成果を発表しようとしていた。利権がWHITEに一本化されるほどの内容だと推測されたが、実行委員のハギリは、武力介入によって阻止されることを知る……。

朝日新聞の書評欄から読んだんだよなあ……。Wシリーズ最終巻。読んできた皆さま、お疲れさまでした。ヒトは死なず、子孫を残せなくなり、ヒトに似せたウォーカロンと共生し、超高度AIによって支えられている世界。その中でヒトは未来を作ることができるのか。最終巻は今までの問いを展開しながら、全方向から森博嗣節を展開し、気づくとボッコボコにされ、痙攣しながら読み終えてしまった。もう一度、こんな感情を体験できるなんて。森博嗣に心動かされた人は、一度読んでいただきたい。

マット・ヘイグ トム・ハザードの止まらない時間

彼がロンドンへ帰ってきたのは400年ぶりだった……。16世紀末に生まれ、その成長の遅さから魔女狩りから逃げ、シェイクスピアと出会い、太平洋を転々とした。トム・ハザードは遅老症なのだ。同じ生きかたをするコミュニティ「アロバトロス・ソサエティ」へ加入することで、トムの長い長い人生は一変する……。それは安全を手に入れたのか。それとも孤独が待っているだけなのか。

新聞の書評欄で知って読んだけど、初めての新☆ハヤカワ・SF・シリーズか。長生き故に出会う人々との結末がどれも切なく、葛藤する主人公に心が痛む。過去の恋、もうしないと誓った今の恋、どんどんリフレインしていった先にある結末とは。歴史パートは雑然としたダイナミックさがリーダビリティ高く、その影響が響く現代パートがまた読ませる。

トム・ハザードの止まらない時間 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

トム・ハザードの止まらない時間 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

森博嗣 天空の矢はどこへ? Where is the Sky Arrow?

日本唯一のウォーカロン・メーカ、イシカワの社長ほか重役関係者が乗った飛行機が、カイロを出発したあとに消えた。同時刻、九州にあるイシカワの開発施設が、武装集団に占拠された。情報局から派遣されたハギリ、ウグイたちは事件の展開を見守る。

Wシリーズ、全10巻の9作目。舞台は遂にここまで……。ヒトとは、AIとは、ウォーカロンとは、ロボットとは、知性とは何なのか。性がこうあるべき時代から、現代の溶け込んでいく変化のように、ヒトとヒトらしいものの境界線がドロドロになっていく。森博嗣の書く攻防戦や、アクションシーンはかなり好きなんだよね。