小川一水 天冥の標5 羊と猿と百掬の銀河

西暦2349年、小惑星パラスにて野菜農場を経営するタックは、一人娘のザリーカとなんとか生活をしていた。しかし老朽化する装置、大手ロボット会社の進出、娘の反抗期に悩む中、地球の学者アニーの世話も負うことになり、生活が変化していくのだが……。その6000万年前、ある惑星の海底に1つの自我が目覚めた……。

ボリュームとしては折り返してないだと……? と感じたシリーズ5巻目。厳しい環境下での農業シム小説は地味ながら面白く、小川一水の書く、人が広げていく物語はやっぱり面白い。断章である6000万年前に目覚めた意識については、少しずつ置いてけぼりになってしまい、終盤になるほど苦労してしまった。しかしエピローグの驚きは、今まで何を読んでいたのか、自分で疑うほど。

高木徹 ドキュメント戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争

92年から95年まで続いたボスニア紛争ユーゴスラビアの解体により、モスレム人による独立を求めるボスニアと、残されたセルビア人のためにストップをかけた勢力。紛争が進む中で、世論はセルビア側の非道に怒りを露わにした。そのバックグラウンドでは「民族浄化」をキーワードに暗躍するアメリカの凄腕PRマンがいた。

講談社ノンフィクション賞新潮ドキュメント賞をW受賞。情報操作を中心としたロビー活動ならぬ攻撃が行われていたという話し。1つのキーワードが世論を動かすリアリティ。ファックスを駆使する以外全く色あせない。良くても悪くても、テレビに出る効果と意味は現代アメリカ大統領選挙にも通じるだろう。

小川一水 天冥の標4 機械じかけの子息たち

大師父が命じた「性愛をもって人を喜ばせなさい」。この言葉を守り続ける“恋人たち(ラバーズ)”。その集団によって目覚めた少年キリアンは、性の中に求めるべきものを探すが……。

あらすじを書く力は、これが限界だ。様々な感想が出ているシリーズ4作目。シチュエーション色々、これがSFならではの官能か! と楽しく読めました。シリーズに合流していく、大きな波に乗せていくダイナミズムは歴史小説のよう。しかし宇宙船の中でとか、宇宙空間でとか、どうして苦手なんだ。