ホリー・ジャクソン 自由研究には向かない殺人

英国の町で5年前に起きた17歳の少女の失踪事件。交際相手だった少年が事件に関わっていたとされるが、自殺によって幕を閉じた。少年と親しかった少女ピップは、無実を照明するために関係者へインタビューを、自由研究として始めた。皆の口は固く、遅々として進まない調査だったが……。

聡明なピップが調査を進めると、彼女を太陽にして立体物の一面を照らすのだけれど、同時に事件の影が色濃くなるストーリーテリングが絶妙。学園生活、街の暗部、勇敢なスパイもの、どの切り口もページを楽々と進めてくれる。残酷になりすぎず(一部辛い展開があったが)、二転三転する物語に満足。

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市川憂人 岡崎琢磨 坂上秋成 円居挽 谷川ニコ 私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! ミステリー小説アンソロジー

なぜか星海社から小説アンソロジー第2弾『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』が刊行!谷川ニコによるパンツの柄を当てる本格推理から、ダイイングメッセージ、日常の謎、作戦会議までが集結。

うっちーと二木の絵文字コンビによる推理合戦が、意外な犯人にたどり着く「絵文字vs.絵文字Mk-II」。これから市川憂人の作品を読むたびに「わたモテアンソロが最初だったな……」と思うことになるのか……。 20巻への歪んだ「わたモテ」愛でミステリーを書いた円居挽「モテないし一人になる」。作風とプロットがテクニカルかつ、スナックバス江への性癖アンサーなので読んでほしい。

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伊吹亜門 幻月と探偵

関東軍が支配する満州。哈爾浜(ハルピン)にある旧陸軍中将の屋敷で、毒殺事件が起こった。岸信介から依頼を受け、厳寒の世界で調査を進めるが関係者の口は硬かった。屋敷に届いた脅迫状に書かれた「三つの太陽」の真相とは……。

デビュー作の幕末から、今作は満州ミステリー。有栖川有栖チルドレンらしい、要素を組み合わせて解く新本格になっている。バックグラウンドとの絡みもよく、いくつもの驚きがあって満足感が高い。いつかは学園ものもぜひ読んでみたい。

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