M・W・クレイヴン キュレーターの殺人

クリスマスを迎えて浮き立つ英国で、切断された人間の指が次々に発見された。各現場に残された「#BSC6」の文字列。それぞれの現場から重要参考人に近づいていくが、解決には至らずいらだちが増すばかりだった。なぜなら巨悪「キュレーター」の存在に気づいていなかったから……。

ストーンサークル』『ブラックサマー』に続くシリーズ3作目。ポーとティリー、フリンが相対する最悪の事件。閃きと捜査で事件の表情が変わっていく面白さと、シリーズを通してキャラクターへの親しみも増し、恐ろしいほどの没入感を作りだす。前作『ブラックサマー』でも大きな問題点があったが、今作も強引すぎるのでは? と思う展開に疑問はある。それでも津波のように押しよせる終盤の驚きに、結局は満足して読み終えてしまった。

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子安美知子 ミュンヘンの小学生 娘が学んだシュタイナー学校

ミュンヘンに留学した学者夫婦が娘フミを入学させたのは、シュタイナー教育の学校だった。点数は付けない、競争もさせない。12年間の一貫教育を通して子どもたちの能力を伸ばしていく。異国の地で母が見たフミの成長とは……。

知人と話していると「私、シュタイナー教育だったんです」「シュタイナー?」「シュタイナー界のレジェンド、子安美知子の本を読んでみてください」と紹介された。ルドルフ・シュタイナーが実践した、義務教育ではない(私たちからすれば特殊な)表現方法を通して算数、アルファベットを一貫して学ぶ。教育方法への関心からページをめくる手がとまらない。同時に、子の成長を見つめる母の温もりが心地よかった。「シュタイナー教育で困った思い出もあります。でも今思うのは、家でも外でもその環境を整える家族が大変。とくに母はすごかった」と知人は楽しそうに笑っていた。

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森博嗣 新装版 スカイ・クロラ The Sky Crawlers

永遠の生命を持つ子どもたち「キルドレ」によって戦争を請け負う世界。新しい基地に配属となったカンナミは空へ飛び、歓楽街へ出かける日々。死とは。戦争とは。

また新装版かよ……と思いきや、清涼院流水の巻末著者インタビューが気になって読んでしまった。森博嗣自身の作品へのコメントはいくつかあるけど、シリーズへの経緯を引き出していてファンにとって読み応えのある内容になっています。清涼院流水による素晴らしい仕事ではないでしょうか。S&Mシリーズでも同企画を始めてほしい。

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