内藤正典 教えて! タリバンのこと 世界の見かたが変わる緊急講座

2021年夏、アフガニスタンの首都カブールがタリバンによって陥落。様々なメディアでタリバンへの批判が挙がる中、1人のイスラム研究者が講演を開催した。共に生きていく方法を考えよう。民主主義、自由、人権を、戦闘機とともに運ぶのはもうやめよう。

ミシマ社が開催したオンライン講座「MSLive!」を書籍化。タリバンが生まれた経緯とイスラム教文化圏の道理を解説する。同時に「キリスト教の民主主義」問題を可視化し、力以外の方法で説くべきだと提言する。岩波ジュニア新書『アフガニスタンの未来をささえる 国際機関職員の仕事』やナショナルジオグラフィックの特集に、本書がプラスされることで大変理解が深まった。交易盛んな文化圏で生まれたイスラム教徒たちのために、私たちが学ぶこと、そして交流の場を提供する人(国)である可能性を残さねばならない。

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森博嗣 オメガ城の惨劇 SAIKAWA Sohei’s Last Case

孤島にあるオメガ城への招待に応じた6人の天才研究者と1人の雑誌記者。招待状にはマガタ・シキの名があり、サイカワ・ソウヘイも出席に応じた。執事も主催者を知らない中、和やかな晩餐がスタートする。その深夜、悲鳴で目が覚めた参加者たちは、異常な事態を知るが……。

S&Mシリーズから続くサイカワ・ソウヘイを巡る物語が完結(本当にそうなの?)。某ミステリーと概ね同じと気づいたのはともかく、ただただサイカワ・ソウヘイが話して動いているだけで嬉しい。懐かしいキャラクターが言葉の節々にも登場し、まるでディナーショーのような1冊だった。暦年のファンで集ってワイワイと話しをしたくなる面白さだった。

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高橋裕子 津田梅子 女子教育を拓く

1871年使節団の一員として渡米した津田梅子。11年の教育を経て帰国した日本には、彼女の居場所は望んだものではなかった。女性のために役立ちたいと願った彼女は、再びアメリカでの教育を受け、日本人女性の高等教育の礎を築いていく……。

渡米先の家族との書簡をくり返し、様々な女性との交流を大切にした津田梅子。言葉通り、シスターフッドと呼ぶ愛に恵まれた人生だった。当時のアメリカがヨーロッパ以上に女性の社会性を重視していた様子や、梅子が生物学を学んだ背景など、なるほどと感じさせる1冊。彼女の父が明治維新による社会情勢の変化をいち早く感じ、渡米を促したエピソードに、歴史の面白さを感じずにはいられない。やっぱり歴史には理由があるんだ。

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