ジェイソン・グッドウィン イスタンブールの群狼

オスマントルコ帝国近衛新軍から、4人が謎の失踪をし、次々に惨殺死体で発見された。その死体が示すのは、かつて最強軍団と呼ばれた部隊イェニチェリによる犯行だった。しかし彼らは逆賊として歴史から消されたはずだったが……。
近隣諸国へ飲み込まれようとする激動の中、宦官ヤシムが町をひた走る話。読み終わるとトルコ料理! 風呂! 後宮! そんなトルコ気分に浸れるほど、異国の情景が詳細かつ活き活きと書かれている。そこだけで十分楽しい。アクション・シーンが気持ちいい、歴史観光小説、ちょっぴりミステリと呼ぶのがいい具合。某所で冒険小説と呼ばれているのを読んで、なるほどこういうものか。
僕としては語っておきたいことで、どことなく清涼院流水の初期JDCを思い出させる作風でもあった。町を事細かに書き、ちょっと特殊な探偵役、風変わりな関係者、なによりも4人目の死体が凄い。「この登場死体が凄い! 2008」をやったら間違いなく1位に入れるね。ここに突っ込んでいる人がいなくて悲しい。思わず笑い、この既読感は流水だと懐かしんでしまった。シリーズが翻訳刊行されたら読んじゃうなあ。

イスタンブールの群狼 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

イスタンブールの群狼 (ハヤカワ・ミステリ文庫)