今年はこれがよかった! という自分なりのベスト(05年版)(06年版)(07年版)。いやー自分のやる気がよくわかる。今回、一気に書いてみたが、仕事で読む量が減ったといえども、実に素敵な1年だった。
今年のベストを選ぶなら間違いなく、ロバート・チャールズ・ウィルスン『時間封鎖』。地球が宇宙から隔離されたハードSFにして、双子の姉弟と、その隣に住んでいる少年の成長物語・回想録に仕上げられた素晴らしき一作。スピン現象が起こった瞬間を目の当たりにした彼らのやりとりといったら……。お洒落な洋風”気の利いた台詞”は名訳。あなたの訳についていきたい。
忘れられないこととして、ジョージ・R・R・マーティン、<<氷と炎の歌>>シリーズの訳者が岡部宏之から酒井昭伸に変わってしまったのは残念。でも続きが読めるならいいや。4部『乱鴉の饗宴』のためにシリーズを1部『七王国の玉座』から再読し、3部『剣嵐の大地』の面白さは2度読んでも正直異常。後だしジャンケンの如く、様々な新要素が登場した4部だったが、ドーン姉妹の燃え・萌えっぷりにあっさりダウン。文庫版を読んで、どうして止まれていられるのか、申し訳ないが僕には理解できない(意味もなく上から目線)。
ミステリでは、ドン・ウィンズロウ<<ニール・ケアリー>>シリーズや、ジェフリー・ディーヴァー<<リンカーン・ライム>>シリーズなど、良作を読み通せたことがよかった。また、ドイツの警察組織とサイコの戦いを書いたクレイグ・ラッセル『血まみれの鷲』や、1920年代から3代に渡る警察署長の苦悩を書いたスチュアート・ウッズ『警察署長』を薦められたことが嬉しかった。大変僕好みでした。
また、フリー・ゲームで登場した犯人当て推理サウンドノベル『安楽椅子犯人 - 湖岸の盲点 - 小此木鶯太郎の事件簿』が問題編、回答編のどちらもスリリングに仕上がった良作だったことを明記しておきたい。プレイヤーの目的は、倒叙形式で語られる犯人の行動を元に、完璧だと思われたトリックから4つのミスを探し出すこと。何が、どうして、犯人を突きつめることになるのか、を考える。様々な場で話題になった本作だが、新作がどうなるのか気になるところ。賞金がかかったことを抜きにしても、続編を待っているプレイヤは多いのでは?
ライトノベル作品では、シリーズを一気に通して読むことが目立った年だったが、ピックアップしたい作品は2つ。打ち切りになるも、どうにか詰め込んで完結させた、須賀しのぶ<<アンゲルゼ>>シリーズを先ず挙げたい。
今年だけでシリーズ外読みきりを出してコバルトから5冊。精力活発な須賀しのぶだったが、残念なことに全5巻予定だった<<アンゲルゼ>>シリーズが(多分)売り上げの関係で泣く泣く4巻に。しかしガッツリとボリュームある最終巻は、涙なくして読めないだろう。某氏が「大きな世界を勢いよく見せる作家」と評したとおりの作品だった。
もう1つは、冲方丁の2つの組織が交差する『スプライトシュピーゲルIV テンペスト』と『オイレンシュピーゲル肆 Wag The Dog』。シリーズ途中で読みとめていたが、「もう士郎正宗はいらない」の一言にマジでー! と反応したのがきっかけ。バトル、シリーズ、少年少女の青春、近未来SF、アニメのような格好よさが詰め込まれた作品。ボード・ゲームが好きな貴方は読んでー。ちなみにシリーズ序盤はスプライト派でしたが、3作目以降はオイレン派。白犬の心理描写が、僕の心を打って止まないのです。シリーズ続刊が出たさいは、是非とも再読してから読んでいきたい。