浦賀和宏 とらわれびと ― ASYLUM

大学構内で連続して起こる殺人事件。何故か男性被害者たちの腹は割かれ、腸がひき出されていた。被害者の姉・森山亜紀子は、友人の穂波留美と真相を探ろうとするが、”妊娠した男性”たちが失踪する事件に出くわす。一方、安藤直樹の友人、飯島の父親が殺される事件が起こった。しかも犯人は金田忠志の妹だという。しかし存在するはずのない妹とはいったい誰なのか……。
安藤直樹シリーズの『記憶の果て』(感想)『時の鳥籠』(感想)『頭蓋骨の中の楽園』(感想)に続く4作目。シリーズに新たな展開を広げつつ、ミステリの構成を使うのは今まで通り。ミステリ要素を使った妊娠腹割き事件と、安藤直樹の友人に関する事件が大胆にクロスする。しかしミステリ部分が本当に酷な出来で、驚きはするものの快感は一切ない。というよりも、快感のないミステリこそが浦賀和宏の持ち味なのかとさえ……思う。

とらわれびと―ASYLUM (講談社ノベルス)

とらわれびと―ASYLUM (講談社ノベルス)