イアン・ランキン 貧者の晩餐会 現代短篇の名手たち2

現代短篇の名手たち2巻は、リーバス警部シリーズ他、英国推理作家協会賞最優秀短篇賞を受賞した「深い穴」「動いているハーバート」を収録したイアン・ランキン『貧者の晩餐会』全19編。ハヤカワ・ボケミスでも刊行されているが、そちらにはあと2編収録されている謎。収録されている作品全体的に、女か金かドラッグかに溺れてしまった系が多く、とりあえず薄暗い。暗いではなく、雨が降りそうな天気のように、嫌な薄暗さが魅力でもあった。しかしリーバス警部ものは、警察内部のバカ話もあり、イギリス流が好きであれば間違いなくツボに入ってくる。殺し屋視点でつづられる「誰かがエディーに会いにきた」、舞台芸人の浮き沈みを淡々と書く「唯一ほんもののコメディアン」、面通しで被害者から犯人扱いとなった刑事の「広い視点」。切れ味鋭い作品を上手く書く作家ではないようだが、それまでの過程が実に楽しく、スリリングだ。