シュテファン・ツヴァイク ツヴァイク短篇選 チェスの話

盲目になったコレクターが美術商に一品を見せようとする「目に見えないコレクション」。カフェの一角で本を読み続ける男を書いた「書痴メンデル」。客船で出会ったチェスのプロプレイヤーに同乗した客たちが勝負を挑む「チェスの話」ともう1編を収録。

シュテファン・ツヴァイクを知らずに、映画『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』から興味をもって読んでみた。日常から一歩踏み外したリトル・ワンダーに溢れた話しが収録されている。それぞれ美術品・書籍・チェスに生き様を委ねる話しだが、歴史の中で満たされずに終えてしまう。第2次世界大戦のオーストリアで活躍したユダヤ系作家が、ナチ政権全盛期の中で書いたかと思うと、ノンフィクションでは得られない感情があった。