金田直久 白装束集団を率いた女 千乃裕子の生涯

2003年4月、突如メディアに追われた白装束の集団。白布と謎のデザインにデコレーションされたキャラバンの正体「千乃正法会」あるいは「パナウェーブ研究所」とはなんだったのか。教祖である千乃裕子の生涯を追いながら、事件の全貌を解説する。

本書はとても悲しい女性の物語だ。多数の信者を率いたGLAの存在感に負け続けた。親には認められなかった。数少ない仲間には裏切られ批判され、離れていった。圧倒的なカリスマ性の大川隆法が出現した。神の言葉が示すような崩壊を迎えそうにない。最後は敵に怯えながら動物や虫を愛した千乃裕子。彼女から暴言を受けても世話をしてくれる信者の人々がいた。その献身に気づかずに終えた千乃裕子に、猛烈な悲しさを感じた。1つの新興宗教を解体すると同時に、何者にもなれなかった、実在した女性を追う傑作だ。