須藤古都離 ゴリラ裁判の日

カメルーンで生まれたニシローランドゴリラのローズは、母の影響で手話を理解した。そして人に匹敵する知能で会話をするほど成長した。ジャングルの厳しさを痛感し、ローズは夢見たアメリカへの切符を運よく手に入れ、動物園での暮らしは順風満帆のはずだった……。檻に子どもが転落。興奮した夫が銃殺された。正義とは。人とは。世界を巻き込む裁判が始まる。

第64回メフィスト賞満場一致の受賞作。リーガルサスペンスへの期待値よりも、ゴリラ・ミーツ・ゴリラの没入感が高すぎる。泥浴びして、根っこを噛みたくなる。ゴリラに感情移入させることで、陪審員制度もドラマチックになって読み応えを感じさせる。動物が主人公の小説は、根底に優しさがあるのでいい。