渡辺保 人物叢書 源義経

ドラマや演劇、小説などに登場すれば人気を得る源義経。伝説を含めて多くの逸話を残した青年の本当の姿とは。現存する史料から義経の一生をつづり、鎌倉初期の活躍を浮かび上がらせる。

記録を淡々と並べた義経解説本であり、横道に逸れない真っすぐな1冊。「鎌倉殿の十三人」でのコミカルな表情と動きを思い出しながら、血と政治に翻弄された一青年と本書を通して出会う。残された情報の少なさに驚かされる。打倒平家と東日本平定が目に見えた頼朝と、日本の中心で政治力衰えぬ後白河法皇に右往左往させられる様子は、ラケット競技のボールでしかない。しかしビッグゲームのボールは大切に残され、語り継がれ、多くの人が思いを馳せるようになったのだ。