相沢沙呼 medium 霊媒探偵城塚翡翠

推理小説家の香月史郎は、難事件を解決をする中で霊媒師の城塚翡翠と出会う。半信半疑の香月だったが、事件を通して死者の言葉を聞く。証拠能力のない霊言と、香月の推理力を組みあわせ、事件解決に向かう……。一方、痕跡を一切残さない連続殺人鬼と思われる犯行が続き、その間隔は事あるごとにに短くなっていた。そして犯人のターゲットは翡翠になるが……。

「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内、どちらもベスト1だったので読んでみた。前評判から着地点が見えながらも、どう着地するかが全く予想できず、そのアクロバティックな姿勢が見えてくると、一気に読み終えるしかなかった。第二話『水鏡荘の殺人』が圧倒的な量の伏線が用意されているのに、シンプルな作品に見せているのは見事。今の邦画テイストで映像化される前に、ぜひ読んでほしい。

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

  • 作者:相沢 沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/09/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ザ・チェーン 連鎖誘拐

レイチェルの娘が誘拐された。何者かからビットコインでの身代金、続けて子どもを誘拐しろと要求が入る。次の家族が身代金を支払い、さらに別の子どもを誘拐すれば、娘は解放される。失敗、通報、相談はレイチェルと娘の死を意味する。連鎖誘拐システム「チェーン」に巻き込まれ、被害者であり加害者になったレイチェルだが……。

雑に紹介すると、完全に幸せになれないシングルマザーが暴力と策略の世界に巻き込まれるやつ。メキシコで行われた交換誘拐をベースに、現代アメリカの家族像とダークウェブなど闇社会が合体。波に乗ってしまえば、最後まで一気に勢いで読めてしまう。サブストーリーとして挟み込まれる事件の背景が魅力的。早川書房のゲラ読み募集で機会をいただきました。ありがとう御座いました。年に一度くらい、こういう作品に出会う。

横田増生 ユニクロ帝国の光と影 Kindle版

大型母艦店を中心とした日本での急成長から世界へ。勢いのあるユニクロの根元には、創業者の柳井正が居座っているのではないか。その正体に迫る。次々と辞職する執行役員。中国にある協力工場の秘密。生まれの山口県宇部での生活。GAP、ZARAを比較しながら、ユニクロのこれからの姿とは。

一審判決は原告の請求棄却だったけど、ユニクロ側が出版社に対し2億2000万円の損害賠償を求め提訴した本書。ユニクロと創業者の柳井正を「急成長の企業」「素晴らしい経営者」ではなく、かといって批判するだけでもなく、「どういった企業なのか」「どんな経営者なのか」と見つめ直していく。柳井正の強烈なカリスマ性と、アパレル業界の危機感が凄まじい結果に……。長期で人材と次の世代を育てていくことの難しさよ。

ユニクロ帝国の光と影

ユニクロ帝国の光と影