岡田晴恵 人類vs感染症

人類の生命を左右してきた天然痘・ペスト・ハンセン病・インフルエンザ……。その脅威に人々は恐れ慄いてきた。同時に原因を解明し、予防方法やワクチンの開発にたずさわった多くの人びとがいた。目に見えない感染症を恐れないために、正しい知識を持つために、私たちができることとは。

紀伊國屋書店感染症特集で並んでいたので読んでみた。15年ほど前の本なので古いかもと気にしたけど杞憂だった。感染症の歴史本なので、何一つ古びていない。ハンセン病にあった差別。天然痘根絶への壮絶な戦い。ペストでは、多くの医療従事者や宗教者が感染者を救うために死んでいる。その姿は新型コロナウィルス感染症が蔓延する現代と、何一つ変わらないことがわかる。人は感染症に恐れ、同時に賢明に生き延びてきた。人類が成長してきた姿を、今この本を読んで知ってほしい。

人類vs感染症 (岩波ジュニア新書)

人類vs感染症 (岩波ジュニア新書)

小川一水 天冥の標10 青葉よ、豊かなれ

全宇宙を覆わんとするオムニフロラを阻止するため、人工超新星爆発を起こそうとするカルミアン総女王オンネキッソ。それに対抗する超銀河団諸族の巨大艦隊へたどり着いたMMS・救世群・2PAのセレス一行。ドロテア奪回、そして人類の生存を賭けた最後の生存作戦が始まる。

シリーズ全10巻、17冊にて完結。どす黒い劇場版ドラえもんのような7巻でテンション爆上げしたものの、それ以降、銀河系でのドンパチが中心になってモチベーション維持に苦労した。作者あとがきで「人類はいつか大きなつまずきを経験するかもしれない」と書いてあったが、まさに新型コロナ感染症の真っ只中に読み終わるとは……。歴史が教えてくれるように、巨大なこの物語に書かれているように、人々は賢く確実に1歩ずつ、力を合わせて何かをなし得る存在なのだと思う。勇気と知恵をくれる小説だった。

チョ・ナムジュ 82年生まれ、キム・ジヨン

幼子を育てるキム・ジヨンは、ある日突然、自分の母や友人が憑依したように振る舞うようになってしまった。キム・ジヨンの祖母から母へ、誕生から家庭での成長、学校生活、受験、就職、結婚、育児……。82年生まれの彼女が歩んだ1人の人生。

Twitterで取り上げている人がいたので読んでみた。韓国人女性の生涯なんだけど、祖母・母・ジヨンの三代記になっていて、それぞれの時代背景はグラデーションのように変化していくのが最高生き方は近代化していくのに、性差別は遅々として進まない。ジェンダー小説であると同時に、シンプルな大河小説でもある。話題になった理由とは違うが、とても印象に残った1作だ。

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)