榊林銘 あと十五秒で死ぬ

背中に銃撃を受けた私の時間は止まった。死神から与えられた余命15秒を使ってダイイングメッセージを残し、反撃はできるか? 死に際のコンゲームを書いた「十五秒」。うたた寝しながら見ていた犯人当てドラマの最終回、エンディング間際で登場人物が急死。そんな伏線があったか? 姉と推理合戦をする「このあと衝撃の結末が」など、15秒後に死ぬをテーマにした4編を収録。

「名大出身、殊能将之を彷彿とさせる」に誘惑されてしまった(ありがとう御座いました)。

首が外れる人たちが暮らす島で胴体焼失事件が起こる中編「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」。特殊ミステリーは苦手なんだけど、あまりにもバカで真剣なので笑ってしまった。テレビ番組と読者への挑戦状と推理合戦が合体した「このあと衝撃の結末が」がとにかく楽しい。それぞれの要素を引きだし、細かな伏線のつみ重ねに驚かされる。読み終わってから気づく、刺さったままのトゲのような余韻が素晴らしい。

あと十五秒で死ぬ (ミステリ・フロンティア)

あと十五秒で死ぬ (ミステリ・フロンティア)

  • 作者:榊林 銘
  • 発売日: 2021/01/28
  • メディア: 単行本
 

康純 性別に違和感がある子どもたち 子どものこころの発達を知るシリーズ7

自分の体が男性か女性か、そして心は決まっているのか。ジェンダーアイデンティティを選択し適応してく中で、子どもたちは多くの困難に悩んでいる。疾患ではなく“性別違和”と表現したときに、周囲にいる大人たちができることとは。

いわゆるLGBTに関する人たちが約5%いることを思うと、職場の何人かはそうなのかと思い、入門書として読んでみた。性同一性障害という疾患ではなく、当事者は問題としての“性別違和”と表現している。性の多様性を受け入れることは個人としていくらでもできるけど、全体としてどう対応するかは難しい。しかし考えていると発言したり、提示したりすることも問題解決なんだと、最初の1歩を踏みだす勇気をもらえた。

折原一 倒錯のロンド 完成版

推理小説新人賞の受賞間違いなし、と手応えを感じた原稿用紙が消えてしまった。失念の原作者・山本安雄と、一攫千金を狙う盗作者・白鳥翔の駆け引きが始まる。盗作者は元原稿を消そうと計画を練り、原作者は盗作者に復讐を誓った。32年経ってからの改訂を加えた完全版。

得意の2転3転するミステリーと新聞の読書欄で取り上げられていたので読んでみた。なるほど! と唸る部分もあるけど、ラストのひとネタが追加されていても、正直なんとも言えんな。久しぶりに解説してほしい1作でした。

倒錯のロンド 完成版 (講談社文庫)

倒錯のロンド 完成版 (講談社文庫)